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9.3kmの世界と14分のドラマ『阪急電車』有川浩

阪急電車 有川浩

著者 有川浩
出版社 株式会社 幻冬社
分類 小説
出版日 2008/8/5
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい

今日は、有川浩さんの名作『阪急電車』を取り上げてみます。

数年前に読んだ後そのままで、内容もうろ覚えでした。

阪急電鉄今津線の9.3kmの世界、14分のドラマに込められたメッセージを紹介させていただきますね。

阪急電車に乗り合わせた登場人物


阪急電車には、8つの停車駅で乗り込んだ登場人物たちがいます。

中でも、印象が強く、舞台の中央に座るのはこの4人でしょう。


翔子

純白のドレス姿で列車に乗った翔子。

結婚式の帰りなのは間違いなくても、彼女は花嫁ではなかった。

同僚の婚約者が別の同僚と不倫を重ね、あるはずの未来が奪われた1人。

翔子は、婚約者と円満に別れる条件として2人の結婚式への参加を要求していた。


時江

保育園の孫に促されるように列車に乗った時江。

長年連れ添った夫との思い出を振り返りながら、ある計画を心に秘めていた。

「年の功」とも呼ばれる豊かな生き方の経験から、列車に乗り合わせた人生に悩む若者の足元を照らしてくれるひと言を話してくれる。


小坂圭一

一見、ロックバンドのメンバーのような近寄りがたい雰囲気の圭一も、学校帰りの列車の中にいた。

あか抜けた男子大学生、実は「ミリオタ」の趣味を秘めた大のサブカル好き。

ふと同じ学校の教材を持った女性の近くに乗り合わせただことが、2人のきっかけになることに。


権田原美帆

いわゆる大人しめの姿の女子大学生は、通称ゴンちゃんと呼ばれていた。

理由は、控えめな姿と性格とは反対の個性的な名字。

近くに乗り合わせた、近寄りがたいバンドマンのような男性との会話が思いのほかはずむことに。



阪急電車の出発と物語の始まり


いつもの通り、阪急電車今津線西宮北口行きは走り出した。

無表情で、何かをして時間を潰している人を乗せて。

本を読む人、スマホを触る人、ぼーっと景色を眺める人。

何もないように思える他人にも、その日1日があって、その積み重ねで思うこともある。


9.3km14分の世界


物語の舞台は、兵庫県を南北に走る阪急電鉄 今津線

通称 阪急電車と呼ばれ、深い茶色のレトロな外観で親しまれる車両が宝塚から西宮北口を駆け抜け、沿線には住宅地が広がり、大阪・神戸方面などへの通勤・通学路線となっている。

列車の路線としては、決して長くない9.3kmの世界に行き交う人と、探そうと思わなければ気がつかない街の秘密。


テーマは気づかない出会いと縁?


電車に始発があって終着駅があるなら、人も同じ。

どちらも、乗り換えがあって、途中で降りて休むこともできて、少しだけ戻ることもできる。

気づかない人とすれ違うように電車はすれ違って、ホームで隣り合わせにもなる。

連結して同じ線路を走ることもある。

路線の交差は、普段は気がつかない縁と同じなのかもしれない。

電車にまつわる物語


『動物園の鳥』坂木司
www.yu-hanami.com

『ようこそ我が家へ』池井戸潤
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