恋愛小説が人気の理由と人気作品の共通点
小説好きではなくても、一度は読んだことがある物語は恋愛小説ではないでしょうか？
恋愛小説の定義と人気の理由、人気作品に共通する「キュンキュンする3つの条件」と「禁断の壁」の演出をまとめてみましたよ。
恋愛小説とは？定義と人気の理由
恋愛小説は、18世紀頃のヨーロッパ、明治時代の日本で生まれた小説のジャンルとされています。
『源氏物語』のように、文学の歴史を遡ると世界中で昔から人気のある小説です。
恋愛小説の定義
恋愛小説とは、「男女間もしくは同性間での恋愛を主題とした小説」とされています。
恋愛そのものの定義は、説明するまでもないと思いますが書き加えておきますね。
恋愛の辞書的な意味は、「特定の人に特別の愛情を感じて恋い慕うこと。また、互いにそのような感情をもつこと（デジタル大辞泉）」とされ、恋人同士の体の性別が異性同士と指定はされていません。
日本国内の2010年以前の国語辞典では、「特定の異性に抱く特別な感情」とあり、一般的な恋愛は異性同士とされていたようですね。
辞書的な意味に「感情を持つこと」とされているため、恋愛には交際から破局もしくはゴールまで全てを描かなくても成立するという一面があります。
恋愛小説の定義は「恋愛を主題とした小説」であるため、テーマが恋愛ならストーリーの中に場面は片思い・告白・交際などどの場面でも、その作品は恋愛小説といえます。
恋愛小説が人気の理由は「欲」
小説が生まれた時代から、ITが発達した現代まで恋愛小説は人気が続いています。
恋は多くの人が実体験している感情です。そのため共感がしやすく、いつの時代も読者に好まれてきたのでしょう。
出典:
恋愛小説のアイデア・ネタ・パターンについて｜ 作り方・コツを紹介 | 小説家デビューを叶える書き方を指導｜榎本メソッド小説講座オンライン
素敵な人に出会い、恋を実らせて安らかな幸せを感じたいという感情。
身の回りにはない刺戟的な恋に身を任せたいというのは、人が生まれ持った「欲」の1つでもあります。
実体験を振り返ったり、空想の恋愛に浸りたいと願う欲は、時代や年代を問わず読者の興味を集め作品の中に惹き込まれる大きな理由といえるでしょう。
人気恋愛小説のキュンキュンする3つの条件と禁断の壁
幅広い人気を集める恋愛小説には、恋心を揺さぶる「キュンキュンする3つの条件」があります。
3つの条件をさらに極端にした「禁断の壁」の演出は、読む人の心を強引に作品の世界に引きずり込む魔力のような力があります。
そして、恋愛小説で感情を疑似体験するためには、リアルな舞台設定になるサクセスストーリーが欠かせないとされています。
キュンキュンする3つの条件
人気の恋愛小説には、いくつかの共通点があることが知られています。
出版社や有名作家さんが運営する解説サイトでは、キュンキュンする恋愛小説には3つの条件があるとされています。
１．三角関係とライバル
２．恋路を邪魔する壁
３．破滅パターン
三角関係とライバルの登場は、現実の恋愛なら避けたい出来事ですよね。
作品として楽しむなら、主人公のお相手がどう揺れ動くのか、どうやってライバルを超えるのかが盛り上がるストーリーではないでしょうか。
恋路を邪魔する壁は、三角関係よりも実体験で経験された方がほとんどでしょう。
現実の恋愛なら、中学生や高校生にとっての親や部活の規則が身近です。
大学生や社会人にとっては、距離や時間、仕事や勉強の忙しさなどの環境は身近な壁といえます。
最後の破滅パターンというのは、愛する2人を切り裂く残酷な出来事です。
ミステリー小説の状況証拠のように、ストーリーの中に散りばめられた小さな出来事がつながり、残酷な事実を引き起こしてしまう。
破滅パターンを乗り越えて先へ進めるかは……作品の楽しみ方次第でしょう。
参照:恋愛小説の書き方とは？成功する三つのパターンを解説 - 専門学校デジタルアーツ東京
「本を書きたい」人が読むブログ：恋愛小説を書くなら知っておきたい3箇条 | 書き方や出版を知る | 文芸社
恋路を邪魔する壁を極端にした「禁断の壁」の演出
キュンキュンする恋愛小説には3つの条件がありました。
そして、恋愛にもルールがあります。
細かなルールは人それぞれですが、日本国内の世の中では倫理・法律・環境の3つが恋愛のルールといえます。
現実ではルールを破った恋愛にはペナルティがあるのは当然です。
一方、恋愛小説で「恋路を邪魔する壁」として描かれると、読む人の心を魔力のような力で強引に作品の世界に引きずり込むストーリーになります。
・既婚者✕未婚者、倫理の壁
・成人✕未成年、法律の壁
・恋愛禁止の仕事、環境の壁
小説ではありませんが、1999年に放送されたドラマ『魔女の条件』は倫理の壁・法律の壁・環境の壁を全て破った作品でした。
松嶋菜々子さん演じる女性教師と、滝沢秀明さん演じる男子高校生が互いに恋に堕ちるストーリーは、成人✕未成年という法律の壁、婚約中の女性教師と男子高校生という倫理の壁、先生と生徒という環境の壁全てを破り恋に堕ちる物語です。
超えてはならない一線を超えた恋愛小説は、「禁断の壁」と表現されるほど人気があるジャンルでもります。
リアルな舞台設定になるサクセスストーリー
また、恋愛小説で読者さんが恋愛の疑似体験をするためには、サクセスストーリーが欠かせないといわれています。
「男女間もしくは同性間での恋愛を主題とした小説」とされる恋愛小説のテーマは、もちろん登場人物の恋の行方です。
私たちに現実の暮らしがあるように、登場人物にも物語の中の暮らしがあります。
登場人物の普段の様子、サクセスストーリーが作り込まれていることが、人気作品に共通しています。
サクセスストーリーには、恋愛に結びつきやすい仕事✕恋愛・学校生活✕恋愛の「定番パターン」が多く使われています。
反対に、恋愛✕趣味・恋愛✕事件のように一見関係なさそうな出来事が思いもよらないストーリーの流れになる「変則パターン」もリアルな舞台設定を感じられるサクセスストーリーではないでしょうか。
恋愛小説の種類
恋愛小説というジャンルには、古くからある王道の青春・純愛小説、10代前半から20代前半までを対象に「笑い」や「ほっこり」なストーリー展開のラブコメ小説、20代後半以降を対象にした大人の恋愛小説の3種類に分けられています。
王道の青春・純愛小説
主人公と登場人物が10代から20代前半くらいで、キュンキュンする3つの条件と定番パターンのサクセスストーリーで想いを深める作品は「王道の青春・純愛小説」とされています。
『小説 君の名は。』新海誠
3つの条件☆☆★
禁断の壁★★★
サクセスストーリー☆☆☆
新海誠監督の映画『君の名は。』は、10代から圧倒的支持を集める名作です。
岐阜県で暮らす宮水三葉と、東京都の高校生 立花瀧が体の入れ代わりをきっかけに想いが深まるストーリーは王道の青春・純愛小説ならではです。
映画版では、音声になっていない三葉と瀧の気持ちが細かく描かれているところが小説ならではです。
『阪急電車』有川浩
3つの条件☆★★
禁断の壁☆★★
サクセスストーリー☆☆☆
有川浩さんの『阪急電車』は、実は王道の青春・純愛小説に含まれているそうです。
個性的な登場人物のサクセスストーリーが印象深い作品ですが、物語の中心は近寄りがたいファッションセンスの小坂圭一と、近くに乗り合わせた控えめな大学生 権田原美帆の出会いと交際がテーマでした。
改めて、恋愛小説として読んでも素敵な作品ですよね。
ラブコメ小説
サクセスストーリーでコミカルな展開が起こる、「笑い」や「ほっこり」なストーリーが描かれた作品はラブコメ小説と呼ばれています。
『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦
3つの条件☆☆★
禁断の壁☆★★
サクセスストーリー☆☆★
読者さんから「面白い」と評価を受けているラブコメ小説が森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』です。
京都を舞台にした大学生同士の恋愛がテーマなのですが、言葉遊びを取り入れたギャグシーンや珍事件など、「笑い」の要素が色濃いラブコメらしいラブコメ小説です。
大人の恋愛小説
主人公と登場人物が20代以上で、リアルなサクセスストーリーや禁断の壁の演出がある作品は、大人の恋愛小説と呼ばれ幅広い人気を集めています。
『桜のような僕の恋人』宇山佳佑
3つの条件☆☆☆
禁断の壁☆☆★
サクセスストーリー☆☆★
いわゆる「涙が止まらない」「日本全国が泣いた」シリアスなストーリーの恋愛小説が宇山佳佑さんの『桜のような僕の恋人』です。
訪れた美容室で働く有明美咲を、偶然デートに誘うことになった朝倉晴人。
写真家を目指す晴人は、桜の舞うの中の美咲にふさわしい恋人になるため本格的にカメラマンとして働き始める。
晴人の誠実さと情熱に押され付き合うことになった2人、だが美咲はとある事情で働くことがままならなくなっていた……。
2人の愛の行方、涙を流さず見守れる読者はいるのではないでしょうか？
参照:第1回「本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞」 今最も届けたい恋愛小説を決める企画が始動！ 記念すべき第一回の受賞作は？ | インタビュー・対談 - 本の話
恋愛小説のまとめ
恋愛小説とは？
恋心を揺さぶる「キュンキュンする3つの条件」と「リアルな疑似体験ができるサクセスストーリー」が欠かせない小説です。
読む人の心を強引に作品の世界に引きずり込む「禁断の壁」の演出がある作品は、際立った人気を集めることも珍しくはありません。
古典の時代から人気が絶えない恋愛小説の種類、現代は「青春・純愛小説」「ラブコメ小説」「大人の恋愛小説」の3種類に分けられています。
自分の実体験を振り返ったり、空想の恋愛に浸りたいと願う私たちの「欲」が、恋愛小説の物語に引き込まれてゆく大きな理由なのではないでしょうか？
