『超・戦略的!作家デビューマニュアル』
著者 五十嵐貴久
出版社 株式会社PHP研究所
分類 実用書
出版日 2017/8/24
読みやすさ ☆☆★読みやすい
今月の本は、小説家になりたい方、ネット小説で作品投稿をされている方におすすめの「作家になるためのマニュアル」を紹介させていただきます。
五十嵐貴久さんの紹介
ミステリー作家の五十嵐貴久さんといえば、本屋さんを通ると、常に「必ず見かける場所」に本が置かれているほど執筆数の多い有名作家さんです。
「作家デビューのマニュアル」の執筆者としては、十分すぎる経験をされている作家さんです。
五十嵐貴久さんの作家歴
五十嵐貴久さんは、ご自身の作品の舞台にもなっている1980年代に出版社に就職され、営業部門と編集部門で出版に関する経験を積まれています。
お仕事をされながら、小説を書き上げ、新人文学賞への応募を続けられ、2001年にホラーサスペンス大賞を受賞され小説家としてデビューされます。
このときの作品が、「リカシリーズ」の1作目『リカ』だったんです。
その後、1年間に2~3作品を超える執筆ペースで世の中に作品を送り届けられ、今では五十嵐貴久さんの作品を見ないで本屋さんを通ることは難しいほどの有名作家さんとして知られています。
season1とseason2の構成と読みやすさ
『超・戦略的!作家デビューマニュアル』は、season1とseason2に分けられた2部構成で執筆数の多い有名作家さんが書かれているため、読みやすい1冊です。
2部構成
取扱説明書的な前書き p3~p8
・Part1作家になるのは簡単だ
Chapter1 p18~p61
Chapter2 p64~p76
Chapter3 p78~p105
Chapter4 p108~p131
・Part2新人賞というゲームの攻略法
Chapter5 p134~p161
Chapter6 p164~p237
Chapter7 p240~p258
蛇足のような後書き p260~p263
構成は、Part1で作家になる方法の解説をされ、Part2で作家デビュー方法「イガラシメソッド」の具体的な方法が書かれています。
書き終えた小説をどうするか?
私ごとなのですが、2021年の春から夏にかけて、1つの物語を完成することができました。
原稿用紙で、250~300枚くらいの文字数で実体験も交えた小説です。
小説は書き上がったのですが、ブログで公開しようか?ネット小説に投稿しようか?落選するとしても1度は新人文学賞に応募してみようか迷っていました。
ちょうど、Tokyo2020の熱気の中読んでいた『スイム!スイム!スイム!』の著者 五十嵐貴久さんの『超・戦略的!作家デビューマニュアル』の中にヒントがあるかもしれないと思い、なかなか見つからない本探しを始めたんです。
作家デビューの方法とは?
「自分は作家になる」
そう思ってから、自分の作品が世の中に知られるまでは電子書籍やブログ、SNSの普及でとても手軽になりました。
小説を発表するだけなら、スマホさえあれば誰でもできます。
ですが、五十嵐さんは「小説を発表すること」と「作家になる」ことには、大きな違いがあると書かれています。
それは、「本屋さんに本が並ぶこと」、つまり商業出版がされることです。
そのためには、作家デビューが必要で次の5つの方法が書かれています。
「作家になる」ことを、ひとつのゲームとして考えてみてください。
中略)
この「作家になる」というゲームには、どんな攻略法があるでしょうか。代表的な方法は以下の5つになります。
1.自費出版
2.ネットに作品を発表。その後、本として出版される
3.出版社の知り合いを通じて(コネを使って)デビューする
4.持ち込み
5.新人賞を獲ってデビューする
Chapter1 p26~p27
『超・戦略的!作家デビューマニュアル』には、すべての方法とメリット・デメリットが解説されていましたよ。
作家になる最短ルート
作家になる5つの方法の中で、五十嵐貴久さんは5.新人賞を獲ってデビューする方法をお勧めしています。
最も早く作家になるには?
本書では「作家になる」ためのベストな攻略法として、「新人賞を獲ること」を推奨しています。
その最大のメリットは、「新人賞を目指して小説を書く」ことが、「最も早くあなたを作家にする」からです。効率面で考えれば、必然的にこの回答が導き出されます。
Chapter2 p64
2000年代になってから、ネット小説でヒットになり作家デビューをされた方は少なくはありません。
ただ、流行の方法はライバルが多いことも事実です。
本の中では、新人賞の応募作品数と小説の出版数を例に、新人賞を獲ることのメリットが具体的に解説されています。
その1番の理由は、「早く、効率的である」ことです。
新人賞は難関?
本書の目的は「作家志望の読者を作家にするためのノウハウを教えること」で、文学について何か言いたいわけではないのです。
その立場から断言いたしますが、新人賞には「傾向と対策」がはっきりとあります。
Chapter4 p130
私も含めて、小説家ではない読者の目線では新人賞は選ばれた人しか超えることのできない狭き門に見えてしまいます。
五十嵐貴久さんのように、「実際に新人賞を受賞された人」には、その攻略方法がハッキリと見えているようですね。
新人文学賞受賞の方法イガラシ・メソッド
新人賞というゲームにはルールがあり、そうである以上攻略法があります。
中略)
まず前提として、新人賞の応募原稿に対する評価は減点法だということがあります。
中略)
そのため、いかに面白くても「個性的でありすぎる」「独創的すぎる」「尖りすぎている」作品が、、審査の過程で落とされるということもあります。このやり方は、今後も変わらないでしょう。
Chapter7 p240
小説の新人賞には、出版社の設定したルールがあり、ルールがある以上攻略方法もあります。
五十嵐貴久さんは、ご自身の受賞経験と『スマホを落としただけなのに』の著者 志駕晃さんの実践から、新人文学賞受賞の方法をイガラシ・メソッドと名付け、本の中で具体的な方法を解説されています。
出版社の編集部門で働かれた経験も踏まえ、新人賞の採点は「減点法」を採用しており、「できるだけ減点されない方法」が新人賞の選考に残る安全な方法としています。
作家を目指す方の「マニュアル」
『超・戦略的!作家デビューマニュアル』は、作家を目指す方の「マニュアル」であることは間違いがありません。
本書が必要な方の例を、著書ご自身が3つに分けてお勧めしていますよ。
小説を書いてみたい人のために
1.小説を書いてみたいor作家になりたいのだけど、書いたことがない
2.書き出してみたことはあるのだけれど、最後まで完成させることができない
3.完成までは至るのだけれど、小説新人賞などに応募しても一次予選すら通過しない
取扱説明書的な前書き p4
ひとまず1作品を完成させた私は、「3.完成までは至るのだけれど、小説新人賞などに応募しても一次予選すら通過しない」に当てはまるのでしょう。
そこで、イガラシ・メソッドを参考に校正に取り掛かり、来年の新人文学賞応募を目指してみます。
貴重な1冊
『超・戦略的!作家デビューマニュアル』は、新書で出版されたあと増版されていない貴重な1冊です。
私も手に入れるのに数カ月必要でした。
Kindle版は半額セールなどを行っていて、すぐに読みたい方にはそちらがお勧めですよ。