本当に本が読みたくなる読書のブログ

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若者たちの「迷い」から生まれる日常の「謎」、坂木司『仔羊の巣』の紹介

仔羊の巣 坂木司

著者 坂木司坂木司〜日常ミステリーで広がる世界観 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
出版社 株式会社 東京創元社
分類 ミステリー小説
出版日 2006/6/26


坂木司さんのデビュー作品、『青空の卵』。

今回は3作続く「ひきこもり探偵シリーズ」から、続編『仔羊の巣』を紹介します。

会社員 坂木司と「ひきこもり探偵」鳥居真一のコンビが、普段の暮らしの中にある思いがけない「謎」を紐解く日常ミステリ。

坂木司さんの作品の中でも、私の好きなシリーズでもあります。



『仔羊の巣』の登場人物〜第1作の「ちょい役」の方も探偵団に加入

かゆいところに手を伸ばすワトソン役 坂木司

外資系保険会社に勤務する、営業マンの坂木司

彼の日常には、突然「謎」が迷い込む。

会社の同僚、偶然通りかかった人、知り合いかはわからない度々会う女性。

迷い込んだ「謎」の解決は相方の探偵 鳥居の役割。

探偵ホームズをサポートするワトソンのように、鳥居の手の届かない「謎」の断片を拾い集める。


キレキレの推理が光るホームズ役 鳥居真一

引きこもりのプログラマー鳥居真一。

人のペースや雰囲気に合わせることが嫌いな、料理上手の名探偵。

ガラスのように澄みきっていて、鋭い洞察力とルービックキューブを簡単に合わせるような推理を見せる彼にも、一般社会といわれる人の波に合わせるられない面もある。

感情を露わにする繊細さ、自分の心に正直な姿が彼の魅力でもあるのだろうか。


若者を導く良いおじさん 木村栄三郎

第1作『青空の卵』では、相談者として登場した元木工職人の木村栄三郎。

今回『仔羊の巣』は坂木司と鳥居真一を支える、探偵団の1人として登場。

ときに厳しい表情を見せ言葉を投げかける。

それは、感情のまま「怒る」のではなく、曲がる道を間違えそうになった若者を「叱る」ことで立ち止まらせるもの。

こんなおじさんが1人、若者の中に混じってほしいなと思えるほんとうの大人。


本物のお笑い警察コンビ滝本と小宮

坂木と鳥居の同級生で地元の交番に勤務する滝本、その後輩の小宮。

坂木や鳥居に比べ、豪快なほど活発な滝本。

ときどき、勢いが余りそうになる滝本をほどよく制するのが相方の小宮。

2人のお笑いコンビのような掛け合いが、シリアスなシーンを和ませてくれる「ひきこもり探偵シリーズ」の見どころでもあります。



『仔羊の巣』物語の始まり


主人公、坂木司は保険会社に営業マンとして勤務していた。

坂木がこの保険会社に就職した理由、それは外資系ということもあり勤務時間の融通がつきやすいため。

親友 鳥居の暮らしに合わせることもある坂木には、働きやすい環境でもあった。

就職してから3年になろうとしていたあるとき、坂木の職場の同僚 吉成から、もう1人の同僚 佐久間の様子が変わったことを相談される。



身近に起こる「謎」を解く「ひきこもり探偵シリーズ」


「ひきこもり探偵シリーズ」第2作の『仔羊の巣』、舞台設定は第1作『青空の卵』と同じ東京都内。

交通機関の描写から、東京23区。

坂木司の勤務先、鳥居真一の生活、木村栄三郎の自宅への道のりから、彼らの活動範囲は1区隣くらいでしょうか?

そんなに近い、身近な場所に、日常の「謎」が落ちていることもあるのかな?


『仔羊の巣』テーマは「現実」を受け入れられるか?


物語のテーマは「現実」を受け入れられるか?

世の中には、どうにもならないことも、過ぎてしまったこともある。

どうにもならないことの多くは、物事を決める意思決定は自分以外。

ほんとうに自分では「どうにも」できないこと。

どうにもできないことに、こだわってしまっては「現実」を受け入れることもできない。

また、過ぎてしまったことをどうすることもできない。

過ぎてしまったことを気にしすぎると、「現実」を受け入れることはできない。

過ぎてしまったことを0にすることはできないから。

『仔羊の巣』の主人公 坂木司と鳥居真一の友情以上の感情、木村栄三郎の先人の思いが伝わってくる作品でした。


「ひきこもり探偵シリーズ」はこちら↓
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