山本周五郎賞で大切にされている小説のストーリー構成
毎年5月は、明治から昭和にかけての文豪 山本周五郎にちなんだ小説の文学賞、山本周五郎賞が発表されます。
今回も見どころのある小説がノミネートされていますが、改めて山本周五郎賞とは「どんな文学賞」なのかに触れてみますね。
山本周五郎賞とは?
毎年5月に発表される山本周五郎賞、受賞作の小説を読んでいたり、好きな作家さんのときには注目されますが、いまいちどんな文学賞なのか知られていないのではないでしょうか?
山本周五郎賞の受賞規定と選考委員
本賞は下記の規定により、すぐれて物語性を有する新しい文芸作品一篇に授賞する。
一、選考の対象は、小説とする。
一、但し、上以外の分野でも選考の対象とすることがある。
一、第三十二回は、平成三十年四月より平成三十一年三月までに発表された作品を選考の対象とする。
一、選考委員/石田衣良、荻原浩、角田光代、佐々木譲、唯川恵
一、選考委員の任期は四年とする。
山本周五郎賞の対象作品は小説に限られ、選考対象は発表前の年の4月から、発表される年の3月までの1年間に発表された小説としています。
現在の選考委員は、石田衣良、荻原浩、角田光代、佐々木譲、唯川恵さんら著名な作家さんが占めています。
文学賞の特徴として、山本周五郎の作風にちなんで「ストーリーと登場人物」の構成が優れた作品が選ばれることで知られています。
山本周五郎
山本周五郎は、明治から昭和にかけて時代小説・歴史小説のジャンルで活躍された日本を代表する作家の1人。
登場人物の気持ちの変化を鋭く描く山本周五郎、心理描写は当時の作家さんの中で際立っていたといわれています。
代表作品は、令和の時代でも知られているものも多く、映画やドラマにもなった『赤ひげ診療譚』『季節のない街』、江戸時代の仙台藩のお家騒動を描いた『樅ノ木は残った(もみのきはのこった)』が有名です。
逸話では、直木賞受賞を始めて断った人物が山本周五郎のようで、そのため直木賞とは候補作の選考で違いを出すようにされているようですね。
また、山梨県出身の方のためか、当時珍しいワインの愛用家だったようですね。
山本周五郎賞作品は映像化されやすい?
山本周五郎賞作品は、芥川賞や直木賞、最近の本屋大賞に比べて読書に興味のある方以外には注目されにくい文学賞です。
一方で、山本周五郎賞の候補作や歴代受賞作の小説は映像化され多くの方に知られる作品になることも珍しくはありません。
ストーリーと登場人物重視の作品
1988年から始まった山本周五郎賞。
歴代受賞作、候補作を眺めていると2008年の第21回頃から、後に映画化やドラマ化される作品を多く見かけます。
映像化された作品は、『ブラックペアン1988』街道尊(2008年候補作)、『下町ロケット』池井戸潤(2011年候補作)、『村上海賊の娘』(2014年候補作)。
ストーリーと登場人物の描写を重視している山本周五郎賞は、キャラクターの設定や世界観が映像化に向いているのでは?と思えてならないです。
過去の山本周五郎賞受賞作品
過去の受賞作の中で、私が読んだことのある作品をいくつか選んでみました。
伊坂幸太郎 『ゴールデンスランバー』(2008年 第21回)
窪美澄 『ふがいない僕は空を見た』(2011年、第24回)
山本周五郎賞は小説のストーリー構成と登場人物重視の文学賞
明治から昭和にかけて、『赤ひげ診療譚』『季節のない街』など後に映像化される作品を残した山本周五郎。
ストーリー展開と登場人物の人物像を深く描写する作風は、当時の作家さんの中でも際立っていました。
山本周五郎の活躍にちなんで、新潮社が主催する山本周五郎賞もまた、映像化されたときに物語に深く入り込める小説が選ばれやすい傾向のようです。
今年のノミネート作品、5つの小説『火のないところに煙は』芦沢央、『鯖』赤松利市、『平場の月』朝倉かすみ、『カゲロボ』木皿泉、『落花』澤田瞳子の中で受賞作はどの小説になるのでしょう?
山本周五郎賞受賞予想は予定しておりませんが、受賞作品は紹介させていただく予定です。