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ポプラ社小説新人賞~気持ちが伝わるリアルな人間関係のストーリー

ポプラ社小説新人賞のお話

読書の豆知識


ノンジャンル小説を募集する新人文学賞特集、第3回はほっこりする作品が人気のポプラ社小説新人賞を取り上げてみました。

過去3年間の受賞作品と、惜しくも選ばれなかった作品のその後から募集される作品に求められている作風に迫ります。

ポプラ社小説新人賞とは


1人の読者として、純粋に〝面白い〟と思い、1人の編集者として、最高の1作をともに作り上げたい、と願う作品を選びます。
皆さんが誰かに届けたい〝面白さ〟が凝縮された作品を、編集部一同心よりお待ちしております。
出典: https://www.poplar.co.jp/award/award1/index.html

ポプラ社小説新人賞は、2006年から2010年までに開催されていたポプラ社小説大賞、2010年と2011年に開催されたポプラ社ピュアフル小説賞の後をついで2011年から開催されている新人文学賞です。


対象と募集要項

対象:誰かに届けたい〝面白さ〟が凝縮されたエンターテインメント小説(ジャンルは問わず)
主催: 株式会社ポプラ社
選考:ポプラ社編集部
締切:2021年6月30日
発表:2021年12月 ポプラ社 公式サイト
原稿規定:400字詰め原稿用紙換算200枚~500枚
賞金:新人賞 正賞、副賞200万円/特別賞 正賞、副賞30万円/奨励賞 正賞、副賞10万円/ピュアフル部門賞 正賞、副賞10万円/時代小説部門賞 正賞、副賞10万円
書籍化:あり、出版後の印税
公式サイト: ポプラ社

募集する作品は、原稿用紙換算200枚~500枚の中編小説。

賞は新人賞、特別賞、奨励賞でそれぞれ1作品が選ばれ、小説の種類に合わせて青春小説の作品におくられるピュアフル部門賞と時代小説部門賞があります。


発表

毎年6月末に募集された作品は、ポプラ社編集部で選考され、その年の12月にポプラ社ホームページ上で発表されます。


ポプラ社小説新人賞の受賞作品


ポプラ社新人小説賞は、今身近にいそうなリアルな登場人物と気持ちが行き交う関係性を描かれた作品が多く受賞されていました。

過去3年間のポプラ社小説新人賞には、学校生活が舞台の青春小説が4作品、仕事のリアルを描いたノンジャンル小説が1作品、時代小説が1作品が選ばれています。

第9回/2019年

新人賞 『ニキ』夏木志朋
ニキ

特別賞 『ふたり、この夜と息をして』北原一
ふたり、この夜と息をして

奨励賞 『隠れ町飛脚 三十日屋』鷹山悠
隠れ町飛脚 三十日屋 (ポプラ文庫)


2019年の新人賞受賞作品『ニキ』は、いわゆる「クセが強い」キャラクターに悩む高校生 田井中広一が主人公。

通っている高校の人気教師 二木良平へ寄せていた親しみは驚きに変わる。

中性的な見た目と穏やかな物腰の奥に彼が隠していたのは、美少年に性的な魅力を感じる小児愛者だった。

閑静な町並みと下町のある、ノスタルジックな世界観から溢れてしまう個性がリアルな物語です。


第7回/2017年

新人賞 『跡を消す 特殊清掃専門会社デッドモーニング』前川ほまれ
跡を消す 特殊清掃専門会社デッドモーニング (ポプラ文庫)

特別賞 『「私が笑ったら、死にますから」と、水品さんは言ったんだ。』隙名こと
「私が笑ったら、死にますから」と、水品さんは言ったんだ。 (ポプラ文庫ピュアフル す)

奨励賞 なし


新人賞受賞の前川ほまれさんの作品は、気ままに暮らす主人公 浅井航が収入の良さで選んだ特殊清掃専門会社の仕事をリアルに伝えてくれる物語。

訳ありの死を迎えた部屋に残る思い、訳ありの死がありきたりな暮らしの隣で起る事実。

製造会社の社長 笹川啓介の抱える仕事への思い。

日常と非日常の思いがけない近さと、行き来する人がリアルに描かれた作品でした。


第6回/2016年

新人賞 『パドルの子』虻川枕
パドルの子 (ポプラ文庫)

特別賞 なし
奨励賞 なし


親友が転校した後、変化のない日々を過ごしていた男子中学生 水野耕太郎は、昼休みに時間をつぶす屋上に広がる「水たまり」を目にする。

そこにあるはずのない水たまりを泳ぐ水泳部の女子選手 水原は、水たまりの中で手を描いて進む「パドル」をすると世の中が変わると語る。

半信半疑ながら、誘われるままパドルをした水野は、人かきで変わった世の中を目の当たりにする。

変わってゆくのは、世の中なのか?それとも、水野自身なのか?

リアルに感じる学校生活と、扉を1つ超えた先に広がる別世界が描かれた作品です。


また、小川糸さんの『食堂かたつむり』は2006年の第1回ポプラ社小説大賞の入賞を逃したあと、編集者の方と描写を練り直し出版されたことが語られています。


ポプラ社小説新人賞の特徴


・優しく心のこもった作品をポプラ社が選ぶ新人文学賞
・毎年2~3作品が受賞
・過去3年間の受賞作品は青春小説が6作品中4作品
・受賞作品の作風はリアルな登場人物たちの気持ちが伝わる物語


ポプラ社らしい優しく、ほっこりするストーリーを描く作家さんを見つけるためのポプラ社小説新人賞。

毎年2~3作品の受賞作品の中でも、青春小説が多く選ばれています。

夏木志朋さんの『ニキ』で描かれる、クセが強い高校生と独特な恋愛観の先生との人間関係。

『跡を消す 特殊清掃専門会社デッドモーニング』で描かれる日常と非日常の思いがけない近さ。

リアルに感じる学校生活と、扉を1つ超えた先に広がる別世界がまさにリアルとインリアルな『パドルの子』。

ポプラ社から出版されている小説では、『食堂かたつむり』『ライオンのおやつ』でせつない設定の主人公が健気に世の中と向き合う、小川糸さんの作品が有名です。

小川糸さんら作家さんは選考委員には加わっておりませんが、児童文学作品や若い世代へのメッセージが込められた小説が多いポプラ社文学賞らしく、リアルな登場人物たちの気持ちが伝わるストーリーの作品が選ばれる新人文学賞といえるでしょう。


ポプラ社小説新人賞のまとめ

ポプラ社新人文学賞
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