『下町和尚の生き方放言 許せないを気にしない。』
著者 名取芳彦
出版社 株式会社佼成出版社
分類 実用書
出版日 2021/1/30
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい
お久しぶりの本の紹介。
再開させていただくにあたり、多くの方の不安に答えてくれる本を選ばせていただきましたよ。
名取芳彦さんの紹介
名取芳彦さんは、東京都江戸川区の元結不動密蔵院というお寺で住職をされながら本を執筆されているお坊さん作家さんです。
経歴はご住職
名取芳彦さんがお務めされている元結不動密蔵院は、弘法大師空海が開いた真言宗 豊山派の宗派のお寺。
お寺のご本尊は不動明王様、そしてえんま様の仏像が人気を集め江戸時代から地域の方に慕われてきたお寺です。
お忙しい住職さんのお仕事をされながら、お寺のホームページ、ブログなどで仏教のお話を発信されていますよ。
他の本の紹介
名取芳彦さんの著書は、販売されているだけで30冊以上。
執筆数はお坊さん作家さん屈指です。
今回紹介させていただく『下町和尚の生き方放言 許せないを気にしない。』の他にも、きっとご自身に合った1冊が見つかるはずです。
『えんま様の格言 心の天気は自分で晴らせ!』
www.yu-hanami.com
『下町和尚の生き方放言 許せないを気にしない。』の構成と読みやすさ
『下町和尚の生き方放言 許せないを気にしない。』は、6章構成でまとめられた「☆☆☆とても読みやすい」1冊です。
本の構成
・はじめに p1~p5
・第一章 本心を知らにゃ始まらん p15~p47
・第二章 とりあえず(簡単な)ルールを覚えとく p51~p84
・第三章 スルーできりゃ、たいしたもんよ p87~p119
・第四章 「仕方ない」からやってみる p123~p158
・第五章 たまにはカラッポになってみな p161~p193
・第六章 諦め(諦らかにす)るのも悪くない p197~p229
・終わりに p230~p234
第一章と第二章は、私たちが感じる「許せない」ことの正体を仏教の教えを元に解説されています。
第三章からは、どのように「許せない」を「気にしない」ことにするのかが実例を元にまとめられています。
☆☆☆とても読みやすい
イラストや格言の書かれた本の多い名取芳彦さんの作品の中では、文字数が多い方です。
活字が並んでいても、文章の柔らかさと説明のわかりやすさは、名取芳彦さんが話しかけてくれているような親しみを感じます。
普段本を読まない方でも、数日で読めるほど「☆☆☆とても読みやすい」1冊ですよ。
不安は突然わいてくるもの?
長引く新型コロナの流行、行動制限が終わったといっても経済的な影響はとても大きいですよね。
地方都市の小さな私の勤務先も、行動制限の影響が従業員の収入を直撃してしまいました。
元々、良くも悪くも大きな収入の変化は少ない業界だっただけに、転職する従業員も増えはじめ、大きなコストカットが起こるかも?と不安の絶えない日々です。
1つの不安は、他のささいな不安も呼び起こし、数年前の気にしがちな私を思い出してしまいそう。
そんなときは、お坊さん作家さんの本で考え方を見つめてみることにします。
許せないことの原因は?
私たちが不安を感じること、嫌なことが許せないと思うことはお釈迦さまの時代と令和の現代では違いがあります。
ですが、変わらないことは原因そのものです。
なぜなら、私たち人間はそう大きく変わってはいないからです。
原因は「思い通りにならない」こと
私たちが翻弄される「苦」の定義は、お釈迦さまの時代から「自分の都合通りにならないこと」とされます。ネガティブな感情やマイナスの感情が湧くのは、いつだって「自分の都合通りにならないとき」ですから、この定義に異論のある人はいないでしょう。自分の都合通りになっていれば、誰も苦しいとは思いません。
これも踏まえて、仏教では、都合を少なくすれば苦を感じることも少なくなると説きます。
・第五章 たまにはカラッポになってみな p165
私たちが不安を感じること、嫌なことが許せないと思うことを仏教的には「苦」としています。
なぜ、不安を感じ許せないと思うかは「自分の都合通りにならないこと」に対して不快に感じる私たちと気持ちの仕組みにあります。
なぜ「思い通りにならない」のか?
私たちは“こうなればいい”という目的達成のために、さまざまな努力をします。この場合、結果に辿り着くために一つの縁が“自分の努力”です。
中略)
ところが、縁のなかには自分で集められないものもあります。
・第四章 「仕方ない」からやってみる p145~p146
それなら、なぜ「思い通りにならない」のでしょう?
いくつか思い起こしてみます。
①努力や工夫が足りないから
②周りや社会の影響
③自分が「そう思う」から
1番に思いつくのは、①努力や工夫が足りないからではないでしょうか?
ですが、出来事には自分1人では手に負えないほど大きかったり、ほとんど関わりのないところから現れる物事もあります。
それなら、②周りや社会の影響なのでしょうか?
これは、その通りかなと思います。
ですが、周りの人に働きかけたり社会に呼びかけてみても、思い通りになることは僅かでしょう。
大きな国の大統領でさえ、思い通りにならず怒りを溜めている方もいるほどなので……。
答えは、③自分が「そう思う」からではないでしょうか?
ただ、「仕方ない」と全てを諦めることが正解かというと、そうではないようです。
仏教的な考え方を実践しているお坊さんも、不安や悩みで苦しむ人の手助けを諦めてはいないからです。
「思い通りにならない」は、「減らす」ことで不安や許せない気持ちが減ると書かれていました。
自分だけで「できる」かを見極める
勇気を出して諦める
実はここが苦の対処の肝心なところです。自分が苦を感じるのは、自分の都合通りになっていないときですが、その都合が自分の努力で叶うのか、叶わないのかをなるべく早く判断したほうがいいのです。
そして、自分の努力ではどうしようもないものは、さっさと諦めてしまうしかありません。
・第六章 諦め(諦らかにす)るのも悪くない p200
「思い通りにならない」を「減らす」ポイントは、自分だけで「できる」かを見極めるとあります。
自分だけで「できる」かは、どのくらい「周りの影響」があるか?ではないでしょうか?
私の場合なら、行動制限の影響で勤務先の収益が悪化しました。
これは、「社会」という世の中の方針、「感染症」は不特定多数が関わることで「周りの影響」はとても大きくなります。
給料の手当の大幅な削減は、「企業」という経営陣の影響があり、個人の成果があっても企業全体が赤字なら自分だけで「できる」ことではないでしょう。
私の収入に当てはめるなら、副業で収入を増やしたり節約で支出を減らすことができる。
値上げの影響はありますが、自分だけで「できる」ことはあります。
収入を給料に頼る割合を減らす、これは自分だけで「できる」ことに当たりますよね。
八方塞がりになる前におすすめの1冊
何か悩みがあり、それが大きな不安になっていると、小さな不安も呼び覚まされてしまいます不安で気持ちが埋め尽くされそうになります。
気持ちに余裕がないと、仕事や暮らしで失敗をしてしまい、それがさらに不安になります。
こうした状況を名取芳彦さんは、「お悩みメリーゴーランド」と呼び、誰かの助けが必要なまで陥ってしまうことを心配されています。
感染症をワクチンで予防するように、悩みを考え方は予防できる。
もちろん、悩みが完全になくなることはありませんが、悩みが不安を呼び、失敗が新しい不安を生む重症化を防ぐことはできるはず。
小さな悩みのうちに、読んでみてはいかがでしょうか?