アルスラーン戦記12 暗黒神殿
著者 田中芳樹
出版社 株式会社光文社(初版 角川書店)
分類 ファンタジー小説、ヒロイック・ファンタジー
出版日 2017/5/20(初版 2006/12/10)
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい
異世界を創り出す小説家 田中芳樹、人気作品とともに紹介 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
日本の名作ファンタジー小説「アルスラーン戦記」シリーズは、第二部の5作目『アルスラーン戦記12 暗黒神殿』を紹介させていただきます。
アルスラーン戦記12 暗黒神殿の登場人物
物語の第二部、『アルスラーン戦記12 暗黒神殿』では物語の細かなシーンで活躍する5人の登場人物を紹介します。
ザラーヴァント
頼もしい体格に恵まれたパルスの若手将校。
パルス中部の自然に恵まれたオクサス地方出身で、ルシタニア軍と対峙したアルスラーンの元に馳せ参じた。
ルシタニアとの戦いの後は、荒廃したエクバターナ周囲の街道や用水路を復興させ土木建築の才能を発揮していた。
共に汗を流す働きぶりは、同年代の兵士に慕われ、とある経緯で行き場を失った浴場世話係ハリムを雇入れることになった。
エステル
4年前、ルシタニア軍のパルス侵攻に参加していた見習い騎士の少女。
当時、王太子だったアルスラーンと出会い、
第二次アトロパテネ会戦でパルス軍の勝利を見届けた後、祖国へと帰ってから4年。
勝ち気で何かと突き進みがちな少女から、礼儀作法の行き届いた振る舞いを身につけ、正式は騎士の称号を得ていた。
荒廃した祖国ルシタニアに、かつての王弟ギスカールの帰還を願い出るため、記憶をなくした騎士の白髪鬼(パラブーダ)とともにマルヤムを訪れていた。
アイーシャ
タハミーネの王太后府で世話係として働く女性。
子だくさんの家庭に生まれ、幼い頃から経済的に苦労してきたこともあり、度が過ぎるほど現実的な暮らしをおくる。
何もないところでつまづき、手にしたものは高確率で落としてしまうほど天然感が場を凍らせることも和ませることも……。
自身の天然と不測の出来事が重なり、巡検使として王太后府の査察に訪れていたギーヴとイスファーンに同行しエクバターナへ向かうことになる。
イルテリシュ
堂々な佇まいが、中背の身長をひと回り以上の巨体に見せる風格を持つトゥーランの元国王。
4年前のパルスの混乱に乗じたトゥーランの侵攻で起こる「ペシャワール城塞の戦い」で敗走し、既に命を落としたと思われていた男は、禍々しい殺気をまとい再びペシャワール城塞の城壁に降り立った。
猛禽類のような鋭さの瞳は、どんな野望の果てを見つめているのか……?
レイラ
オクサス地方のハッラール神殿で、女神官見習いとして働いてく19歳の女性。
屋外作業で日焼けした整った顔立ち、引き締まった長身の体つきと短髪の髪形から遠目では、背の高い青年と見間違うほど。
護身術の技量を超えた達人の域の棒術を振るう腕には、ミスラ神がデザインされた銀の腕輪をはめていた。
王都エクバターナと夜の影
四季の鮮やかなパルスでも、夏至が過ぎた7月の真夏の季節「盛夏四旬節」に入ると南国のような猛暑の日々が続く。
太陽に熱せられる人工物の多い王都エクバターナも、昼間は熱波に覆われ冷えたビールと「酢蜜かけ氷菓子」の売れ行きが好調だった。
太陽が西の山間に隠れると、青から群青に変わる空に合わせて冷風が舞い、快適な夜が訪れていた。
夜を楽しみに待つのは、人に限ったことてわもなかった……。
地上の陰湿さを閉じ込めた暗黒神殿
「盛夏四旬節」も半ばに入り昼間よりも夜の方が行き来する人が増えるパルス王都エクバターナ。
アルスラーン王が統治者になり、過度な華やから市民生活に見合った賑わいを見せるようになった大都市では、パルス歴325年になってから魔物の出没が相次いでいた。
一方、東の要所ペシャワール城塞は大将軍各クバードに率いられたデマヴァント山の捜索隊の帰還に合わせたかのように、魔物の軍勢の襲撃を受けていた。
パルス各地で相次ぐ魔物の出没の謎がしまわれているような、地下に佇む巨大施設 暗黒神殿がとある場所で発見された。
魔物の元凶と社会問題のリンク
賑わう都会には、対になるように治安の悪い地域がある。
SNSが普及する前は、こういった地域を語ることがタブーであるかのように貧困や不法労働などの社会問題に蓋をされていた。
繁栄する町並みの地下に存在する暗黒神殿、現代の社会問題と向き合うかのように見えなくもない。
ファンタジーの世界がふと現代社会と重なるように思えるのも、アルスラーン戦記ならではの物語の魅力の1つです。