ファンタジー小説の定義と特徴
ファンタジー小説ってどういうジャンル分けがされているのでしょうか?
ファンタジー好き大人の私は、「魔法」「異世界」といった設定が登場する小説はファンタジー小説に当てはまるのでは?と何となく思っていました。
今回は、読書ブログらしく、ファンタジー小説の定義と特徴をまとめさせていただきますね。
ファンタジー小説の定義とファンタジーの要素
ファンタジー(英: fantasy)は小説に限らず、漫画やアニメ、ゲームやアプリの作品を分類する際にも使われている表現です。
人気作品は映画化やアニメ化されることもあり、大人の文学というよりも児童文学に近いイメージのあるファンタジー小説とは?どんなジャンル分けがされているのでしょうか?
ファンタジー小説とは?
ファンタジー小説とは、魔法や空想の生き物が登場する、ファンタジー的な要素の舞台設定の小説です。
「ハリーポッターシリーズ」のように現実世界と隣り合わせの世界観、「指輪物語」のように異世界の世界観どちらもファンタジー小説に含まれています。
ファンタジーの定義
ファンタジー(英: fantasy )の定義は、「超自然的、幻想的、空想的な事象を主要な要素、あるいは主題や設定に用いるフィクション作品のジャンル」とされています。
主要な要素とされている部分が、「ファンタジー的な要素」「ファンタジーの特徴」と表現されます。
1.典型的な登場人物
2.魔法の設定
3.善悪の精神
4.既存の価値観の逆転
5.現代の概念の反映
6.伝承の取り込み
参照:梅内幸信『「ファンタジー文学」に関する定義づけの試み』
ファンタジー文学が専門の梅内幸信さんは、ファンタジーの特徴として、6つの内容を定義づけされています。
とても専門的な内容なので、論文を参考にさせていただきながら、大まかに4つの特徴に絞らせていただきました。
ファンタジー小説の4つの特徴
1.【世界観】魔法、超能力、超自然現象がある
2.【舞台設定】現実、異世界、平行世界
3.【種族】登場人物に空想の種族が登場
4.【価値観】現実とは違う価値観がある
ファンタジー小説の4つの特徴、1つ目は超能力、超自然現象など科学的な方法で説明がつかない世界観があることです。
科学的に筋道が通っていると、SF小説との区別が曖昧になってしまうため、とても大切なポイントといえます。
2つ目は、舞台設定が現実、異世界、平行世界ということです。
ただ、舞台設定だけではファンタジーとはいえないとされています。
3つ目の特徴は、空想の種族が登場することです。
「空想」といっても、「ナノマシンの暴走で生まれたサイボーグ」は科学的な筋道が通っているためSF小説の設定といえます。
ドラゴンやホビット、鬼や妖怪など「意志を持った生き物」とされています。
最後の特徴は、登場人物の価値観です。
空想の神話や宗教を信仰していることはわかりやすい違いですが、「物理法則が否定されている」「命の価値が違う」など現代の価値観とは異なる考え方を持つ種族が描かれていることがファンタジー小説ならではの特徴です。
4つの特徴に当てはまり、科学的な方法で説明がつかない内容の作品がファンタジー小説の特徴といえます。
大人向けか子ども向けかという読者層ではなく、作品の特徴に基づいたジャンル分けがされていますよね。
ファンタジー小説の大まかな分け方とリアリズム文学
ファンタジー小説は、ファンタジー小説の4つの特徴の「2.【舞台設定】」が「現実」か「異世界」かの違いでハイ・ファンタジー(英:High Fantas)とロー・ファンタジー(英:Low Fantasy)の2つに分けられます。
また、魔法や空想の生き物が登場するファンタジー小説と反対の立場の作品に、リアリズム小説というジャンルがあります。
現実が舞台のロー・ファンタジー
ロー・ファンタジーは、ファンタジー小説の4つの特徴のいくつかが当てはまりますが、「2.【舞台設定】」が現実か何らかの現象でズレてしまった平行世界が描かれています。
ロー・ファンタジーでは、現実世界の舞台設定の中に魔法などの世界観、異種族が組み込まれています。
魔法や異種族と全く関わりのない人と登場人物の接点、現実世界ではマイノリティーになるファンタジーの特徴をどのように融合させるかは作家さんの構成力次第ではないでしょうか。
ファンタジー小説とリアリズム小説
小説のジャンルそのものは、英語でfictionと書かれるように「作り話」です。
同じ「作り話」でも、現実の世界観をありのままに描くジャンルはリアリズム小説と呼ばれています。
ファンタジー小説の代表作
それでは、花水由宇(hanami_yu)の読んだことがある作品の中からファンタジー小説の代表作と呼ばれる3作品を選んでみました。
「ファンタジー小説の4つの特徴」に合わせて、ハイ・ファンタジーとロー・ファンタジーの2つのジャンルに分けてみます。
「世界観」「舞台設定」「登場人物」「価値観」の4つの特徴は、ファンタジーらしく現実との差が大きいほど☆を多くしています。
『ハリーポッター』J・K・ローリング
www.yu-hanami.com
J・K・ローリングさんの紹介〜ハリーポッターを生んだお母さん - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
ファンタジー小説のジャンル:ロー・ファンタジー
世界観☆☆☆
舞台設定☆☆★
登場人物☆☆☆
価値観☆☆★
J・K・ローリングさんの『ハリーポッター』シリーズは、世界的に有名なファンタジー小説です。
魔法の描写が細かく設定され、幻想的な世界観と感じるのは間違いありません。
舞台設定は、現実のイギリスで時代は20世紀半ばでしょうか?
同じ現実の世界の中に、魔法界と一般社会の2つの社会がある設定です。
登場人物には、ゴブリンやケンタウルスなど意志と言葉を持った種族が現れ、それぞれの種族によって価値観は異なります。
魔法使いの人間の価値観は現代的で、生まれや所属団体で主義主張が分かれるところは、どこか中世の価値観を表現していますよね。
本が出版された当時のファンが大人になり、子どもにもおすすめする、世代を越えて読みつがれている名作です。
『死神の精度』伊坂幸太郎
伊坂幸太郎~伏線回収とストーリーのリンクが見せる伊坂ワールド - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
ファンタジー小説のジャンル:ロー・ファンタジー
世界観☆☆★
舞台設定☆☆★
登場人物☆★★
価値観☆☆★
伊坂幸太郎さんの『死神の精度』は、死期の迫った人間のもとに死神が訪れるファンタジー小説です。
魔法や超自然現象はほとんどなく、リアルな世界観に不思議な感覚を覚えてならない物語。
舞台設定は現実の社会で、登場人物は死神と人間のみで構成されていて、妖怪の名前は使われていても空想の種族が活躍する場面はありません。
死神の価値観もシステマチックで、ふと経済小説ではないかと感じてしまうほどリアルな作品です。
社会で働いている方は、どこか死神のビジネス的な働き方に納得してしまう大人にもおすすめのファンタジー小説といえます。
『指輪物語』J・R・R・トールキン
ファンタジー小説のジャンル:ハイ・ファンタジー
世界観☆☆☆
舞台設定☆☆☆
登場人物☆☆☆
価値観☆☆☆
映画化もされ歴史のある『指輪物語』は、説明はいらないのかもしれません。
魔法や契約と呼ばれる条件があり、異世界の中つ国が舞台のハイ・ファンタジーです。
登場人物は、人間、エルフ、ホビット、ドラゴンと空想の種族が暮らす社会が細かく描かれています。
中つ国の世界には、神話や伝承で物語の時代まで語り継がれる独特の歴史と価値観があります。
日本国内でも1970年代に出版されてから、多くのファンタジー小説に影響を与えたとされ、長年読みつがれている代表的なファンタジー小説です。
小説を読んだ方が大人になって、子どもと映画を楽しみ、さらに映画の続編で孫世代と作品の仕上がりを楽しめる。
三世代に渡って読みつがれている世界的な名作です。