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推理小説・ミステリー小説とは?現代の定義とミステリーの3つの条件

推理小説・ミステリー小説とは?

読書の豆知識


推理小説・ミステリー小説とは?

今回の読書の豆知識は、推理小説・ミステリー小説の定義とストーリーに欠かせないミステリーの3つの条件から、読者家 花水由宇(hanami yu)なりの答えを見つけてみましたよ。

推理小説が生まれた背景と歴史、推理小説に欠かせない登場人物の役割とともにまとめさせていただきますね。

推理小説・ミステリー小説の定義とは?


推理小説(英:detective story,mystery story)とは主として犯罪に関係する秘密が、論理的に解明されていく過程の興味に主眼をおいた小説と定義されています。

江戸川乱歩による推理小説の定義

日本国内では、文豪 江戸川乱歩の「主として犯罪に関する難解な秘密が、論理的に、徐々に解かれていく経路のおもしろさを主眼とする文学」という見解が「推理小説とは?」の答えとされています。

日本の推理小説の基礎を作った江戸川乱歩の示した答えは、推理小説の定義のひとつの答えとして現代でも大切にされています。


推理小説とミステリー小説の違い


謎解きがテーマの小説を紹介される場合、推理小説とミステリー小説どちらのジャンルに分けようか迷いますよね。

推理小説というのは大まかな分け方で、謎解きがテーマの小説全般を扱うジャンルは推理小説に含まれるとされています。

推理小説の中でも、本格ミステリー小説・日常ミステリー小説・新本格ミステリー小説が「狭い意味でのミステリー小説」といえます。

文学賞や出版社の公募では細かな違いが大切ですが、読者目線では推理小説とミステリー小説は同じ意味で使われています。
本格ミステリ小説の中に含まれる日常ミステリ小説 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ




推理小説の誕生と日本国内での発展


推理小説の誕生は、1841年のイギリスとされ、日本国内では1889年に初の推理小説が発表されています。

推理小説の誕生

文学の中でも推理小説のジャンルは新しく、1841年に発表されたイギリスの作家エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』が史上初の推理小説とされています。

推理小説が誕生した背景には、1830年代のイギリスで事件の捜査と証拠で犯人を特定し解決する警察制度が整ったためです。

イギリスの小説家は、エドガー・アラン・ポーに続くように推理小説を発表し、1887年にはアーサー・コナン・ドイルの代名詞ともいえる「シャーロック・ホームズシリーズ」の第1作『緋色の研究』が出版されます。

シャーロック・ホームズシリーズ」が人気を集めた後、1913年にE・C・ベントリーの『トレント最後の事件』、アガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』など長編推理小説の名作が生まれ、推理小説の黄金時代と呼ばれるようになります。


江戸川乱歩と日本の推理小説

イギリスで誕生した推理小説は、近代文学が発展が発展し始めた日本にもすぐに取り入れられます。

日本国内で初の推理小説は、1889年に黒岩涙香が執筆した『無惨』です。

その後は海外の推理小説の翻訳が続き、大正時代の1925年に江戸川乱歩の『D坂の殺人事件』が発表されたことで名探偵が謎を解決するストーリーの推理小説が生まれます。

江戸川乱歩は、1936年に『怪人二十面相』を執筆し探偵役が少年という新しいジャンルの発見にもつながります。

戦後になると、1946年に横溝正史が「金田一耕助シリーズ」の第1作『本陣殺人事件』を発表し、状況証拠をいくつもつなぎ合わせ、難しい謎解きを楽しめる推理小説が人気を集めるようになります。




ミステリーの3つの条件「謎」「伏線」「論理的解決」


推理小説とミステリー小説で扱われる「ミステリー」は、具体的にどんな条件があるのでしょう?

有名ミステリー作家の道尾秀介さんや、伊坂幸太郎さんをデビュー当時から支える編集者 新井久幸さんは『書きたい人のためのミステリー入門』の中でミステリーの条件を3つにまとめられています。

新井久幸さんによると、ミステリーの3つの条件は「謎」「伏線」「論理的解決」にあることとされています。

謎とは、ほとんどの場合、辞書の説明にある「犯行の動機や方法」「犯人」である。しかし、これらがあまりにも平凡だったり、あからさまに誰かを指し示すようではつまらない。
誰だろう?なぜだろう?どうやったんだろうという疑問を抱かせるから、読者は興味を持ってくれる。ミステリーを牽引する最大の力は、これらの謎だから。
新井久幸『書きたい人のためのミステリー入門』p15


ミステリーでなくてはならないのは、何といっても

犯行や事件が起こるまで読み進めた段階では、疑問しかでてこない。

犯行が不可能な現場を作り出す密室トリック。

登場人物全員にアリバイがあるアリバイトリック。

同時に違う場所で事件が起こる時間差トリック。

読者にとって、見当もつかない驚きのトリックで生み出される謎がストーリーに引き込まれる大きな理由といえます。


伏線

謎解きの手がかりとなる伏線がないと、ミステリーにはならない。伏線がなければ、「推理」できないからだ。「伏線を張る」とは、解決の根拠や手がかりとなる事実・出来事を、事前に提示しておくことを指す。
中略)
印象的に手がかりを置き、解決の段になって、「ああ、そうだったのか。そういえば、ちゃんと書いてあった」と思わせてこその伏線である。
新井久幸『書きたい人のためのミステリー入門』p18~p20


伏線は、謎解きに欠かせない証拠や理由をさり気ない表現でストーリーの中に「置いておく」方法です。

伏線回収という言葉はミステリーに限らず、漫画やアニメ、ドラマでも使われていています。

張り巡らされた伏線が、謎解きの段階になって、「そういえば!」と思い出すくらい自然に結びつく伏線回収が読者の気持ちを揺さぶってくれます。

本当に本が読みたくなる読書のブログで取り上げさせていただいた作家さんの中では、伊坂幸太郎さんの描くストーリーは伏線回収が見どころだと思いますよ。
伊坂幸太郎~伏線回収とストーリーのリンクが見せる伊坂ワールド - 本当に本が読みたくなる読書のブログ


論理的解決

いくら手がかりがきちんと示されていても、それらが有機的に組み合わさり、一連の推理を形成しなければ意味がない。探偵が犯人を特定しても、勘や曖昧な根拠では誰も納得してくれない。
論理、というと難しそうに聞こえるかもしれないが、要は、「○○だから、誰々だ」という理屈が通っているかどうかである。
新井久幸『書きたい人のためのミステリー入門』p21


証拠も揃わないうちに犯人が自白してしまったり、突然DNA鑑定で揺るがない証拠が出てしまっては推理小説としては成り立たないでしょう。

どんでん返しが見どころといっても、突然新しい登場人物が「犯人でした」と現れたり、トリックが超能力で成り立ってしまってはミステリーとはいえないはずです。

客観的な証拠を積み重ね、他に当てはまる人物をアリバイで外し、トリックの謎を紐を解くように解決しながら、1つの道筋を立てた推理を突きつけ犯人を追い詰める。

謎解きの醍醐味ですよね。

状況証拠を積み重ねた推理を展開する作家さんは、日常ミステリーの坂木司さんが1番に思い浮かびます。
坂木司〜日常ミステリーで広がる世界観 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ


推理小説のジャンルと登場人物


ミステリーの3つの条件「謎」「伏線」「論理的解決」とともに、推理小説に欠かせないのは登場人物の役割です。

推理小説に欠かせない「探偵役(ホームズ役)」「ワトスン役(助手役)」「犯人役」の役割と日本国内の推理小説のジャンルの変化をまとめてみます。

推理小説の登場人物の役割

・探偵役(ホームズ役)
犯人を突き止めたり、物語の謎を推理する登場人物は「探偵役」と呼ばれています。
定番の私立探偵や犯罪捜査に関わる警察官、検事、弁護士、警察に協力する記者などが担う役割です。

中でも、数多くの謎を解いた探偵専門の登場人物は、アーサー・コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズシリーズ」のシャーロック・ホームズにちなんでの「名探偵(ホームズ役)」と呼ばれています。

他にも、鋭い推理力を持つ一般人の「素人探偵」や「アマチュア探偵」、少年達が協力して謎に挑む「探偵団」が探偵役として描かれています。
推理小説の探偵役には、大きく思慮型(しりょがた)探偵と行動型(こうどうがた)探偵の2つのタイプに分けられています。

推理小説に登場する探偵の2つのタイプ - 本当に本が読みたくなる読書のブログ


思慮型探偵は、集められた証拠から犯行を裏付ける推理を組み立てるタイプの探偵です。

思慮型探偵の中でも、証拠集めを仲間に任せ、推理に集中するタイプは安楽椅子(あんらくいす)探偵とも呼ばれています。

行動型探偵も、証拠を元に推理をする部分は思慮型探偵と同じですが、証拠集めと事件を暴くために現場に積極的に足を運び、シミュレーションで裏付けを確かにする点で違いがあります。

シリーズものの推理小説では、思慮型探偵が積極的に捜査に関わる行動型探偵に変わる姿や、大きな挫折を経験した行動型探偵が仲間に支えられ思慮型探偵として推理に集中するような、探偵役の成長も楽しみのひとつです。

坂木司「引きこもり探偵シリーズ」の名探偵の成長と探偵の2つのタイプ【ネタバレ】 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ


・ワトスン役(助手役)
探偵役の助手や相棒、物語の語り部となる登場人物はワトスン役(助手役)と呼ばれています。
こちらもシャーロック・ホームズシリーズ」の登場人物ジョン・H・ワトスンにちなんでワトスン役と呼ばれています。

専門知識を活かして積極的に捜査を手伝う助手、傍観者として語り部に徹する登場人物など役割のパターンはさまざまです。

・犯人役
推理小説のストーリーの中で犯行を行った登場人物が犯人役です。

推理小説の基本的なストーリーでは、犯罪や日常の謎などの事件が起こり、犯人がわからないまま捜査・推理が行われ、最後に謎が明かされ探偵役が犯人を追い詰めることで物語が完結します。

本格ミステリでは、読者が犯行のトリックを紐解き、犯人役を推理するのが最大の楽しみでもあります。


推理小説の細かなジャンル

戦後の日本国内で大衆文学(エンタメ小説)のジャンルが数多く生まれたように、推理小説でも細かなジャンルがいくつも生まれるようになります。

1960年代以降に推理小説は多様化したとされ、黒岩重吾西村寿行の「社会派推理小説」、西村京太郎の「トラベル・ミステリ」、筒井康隆の作品が有名な「SFミステリ」のジャンルが生まれています。

1980年代末から2000年代にかけては、推理小説の漫画化・アニメ化が人気を集め、名作の登場人物や事件をモチーフにした「名探偵コナン」や「金田一少年の事件簿」は日本を代表する推理漫画として令和の現代には海外にも広まりました。

2000年代からは、綾辻行人有栖川有栖の「新本格ミステリ」、登場人物の視点を切り替える鏡的プロットなど物語のストーリーそのものが謎になっている「メタミステリ(メタフィクション)」、コージ・ミステリよりもさらに身近な「日常の謎」、事件や結末がありえないほどバカバカしさを重視するミステリー「バカミス」などさらに細かなストーリーの推理小説が生まれています。

2010年代以降は、テーブル上で対面した登場人物同士の頭脳戦や仮想空間上などの「特殊設定ミステリー」と呼ばれる特殊な条件下のジャンルが多く発表されています。




謎・伏線回収・論理的解決のあるストーリーが推理小説・ミステリー小説


つまりミステリーというのは、〈謎があって、解決するための伏線がきちんと張られていて、その手がかりを適切に論理的に組み立てれば、唯一無二の真相に辿り着く〉、というタイプの物語だと思ってもらえればいい。
p22


推理小説・ミステリー小説とは?
定義だけでは抽象的で、文学賞の募集要項では専門的過ぎた疑問の答えを出させていただきますね。

推理小説・ミステリー小説とは、謎・伏線回収・論理的解決のあるストーリーの小説とまとめさせていただきます。


参考にした本


『書きたい人のためのミステリー入門』新井久幸
www.yu-hanami.com

『読書の価値』森博嗣
www.yu-hanami.com

『読書する人だけがたどり着ける場所』齋藤孝
www.yu-hanami.com

『超・戦略的!作家デビューマニュアル』五十嵐貴久
www.yu-hanami.com

『小説の書き方』森沢明夫
www.yu-hanami.com


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