『夕闇通り商店街 コハク洋菓子店』
著者 栗栖ひよ子
出版社 株式会社ポプラ社
分類 小説
出版日 2022/5/5
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい
今回の小説は、小説投稿サイト「小説家になろう」でのヒットがきっかけでデビューされた栗栖ひよ子さんの作品を紹介させていただきます。
『夕闇通り商店街 コハク洋菓子店』は、続編『夕闇通り商店街 たそがれ夕便局』に続く「夕闇通り商店街シリーズ」のはじまりの物語です。
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コハク洋菓子店を訪れる登場人物
6つの物語には、それぞれ悩みを抱え、世の中での存在が不安定な日常を過ごすリアルな主人公が登場する。
彼ら彼女らは、今の私たちの誰かでも、身近にいる誰かでもあるのかもしれない。
加奈(「第一話 よくばりこんぺいとう」)
中学生の頃からの憧れの先輩で、カッコよく勉強熱心な彼氏と交際する高校2年生。
受験生になった彼氏と一緒に過ごしたい思いを抱え、広がりそうな距離感に不安を抱き、それでいて迷惑になりたくないと抱え込む彼女が求めたのは……。
子熊歩(「第二話 とうめい和三盆」)
愛嬌のある容姿に悩みながらも、不動産会社に勤務する25歳の男性会社員。
「営業に向いている」と肩を押す先輩に勧められるまま、自分では冴えないと感じる日々を過ごしていた。
名字の小熊(こぐま)と小柄な容姿は本物のゆるキャラのようと女性社員に扱われ、コミュニケーション力の高い同期との差に悩む彼が求めるものは……。
千花(「第五話 たしかめたいりんご飴」)
子どもができ会社を辞めてから、専業主婦になった30歳間近の女性。
育児では頼りない夫 樹と、家事と娘の桜の育児の日々が過ぎる。
かつてあった世の中との、つながりが少ない暮らしに悩む彼女が求めるものは……。
孤月(こげつ)
レトロな商店街の一角で、「コハク洋菓子店」を営む20代半ばの青年。
古風な袴姿の服装と、ミスマッチな金髪と白い肌はアジア人離れしていて、どこか浮世離れした空虚な存在に見える。
商品棚に並ぶ手づくりの菓子は、きらびやかで美しく、訪れる人の感性を惹きつける。
切れ目の淡い瞳でお客を見つめる彼が求めるものは……。
レトロな商店街を訪れ始まる物語
住宅街から少し離れた、高台にある神社。
夕焼けに映え、暗闇に迷いそうな境内の奥の茂みがあけた先、舗装されていない道に提灯が並ぶレトロな商店街が広がっていた。
世の中での存在が不安定になると、ふと訪れることができる商店街は忙しい人々が暮らす世の中と、ほんの僅かに違っていたりする。
日常と非日常、この世とあちらの重なり合い
物語の舞台は、登場人物たちが暮らす何気ない日常が過ぎる世の中。
この日常の少しの隙間に、ほんの僅かに違っている世界がある。
続いているようで隔たれていて、離れているようで隣り合っていたりする。
この世とあちらは、それぞれの境界の場所で重なり合っているのかもしれない。
何事も用法(やり方)と容量(程度)
『夕闇通り商店街 コハク洋菓子店』には、物語それぞれに「何かに悩む」主人公がいて、求めるものを得たいと悩み、世の中での存在が不安定な日々をおくる。
「第一話 よくばりこんぺいとう」
「第二話 とうめい和三盆」
「第三話 かくせない栗最中」
「第四話 みがわりキャラメル」
「第五話 たしかめたいりんご飴」
「最終話 さよならの豆大福」
「コハク洋菓子店」で販売されるお菓子には、こう書かれている。
「用法・容量を守ってお召し上がりください。」
まるで、悩みと解決方法を誤らない道しるべのようにも思えてならない。
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