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物語に必要なキャラクターの7つの役割とアルスラーン戦記の登場人物

アルスラーン戦記の登場人物の魅力

読書の豆知識


今回は、物語に必要な登場人物のキャラクターの7つの役割をテーマに読書の豆知識をお送りします。
シリーズで紹介させていただいた人気ファンタジー小説アルスラーン戦記』第一部で活躍した登場人物から、7つの役割に当てはまるキャラクターを紹介させていただきますね。

※こちらのページでは、紹介作品の【ネタバレ】が含まれております。小説のストーリーを楽しみたい方は、作品の紹介記事を先にご購読いただきたくお願いいたします

登場人物に与えられたキャラクターの7つの役割


小説や漫画の登場人物に関する本やWebサイトでは、物語の立ち位置で登場人物にはヒーロー、賢者(メンター)、門番(ガーディアン)、使者(ヘラルド)、変化者(シェイプシフター)、悪役(シャドウ)、道化師(トリックスター)とキャラクターの7つの役割があると書かれています。

ヒーロー=主人公キャラクター
ヒーローキャラクター

・物語のテーマそのもの
・物語の中で成長する
・読者目線の冒険者で気持ちの代弁者
ヒーローは物語の主人公キャラクターです。
小説や漫画のテーマそのものを語る役割があり、若いヒーローはもちろん大人のヒーローでも物語の中で成長する役割があります。
作品の種類にもよりますが、主人公側と敵側が対立する作品では、敵側の主人公がアンチヒーローという役割を担うことも少なくはありません。
また、キャラクターの7つの役割の中では読者目線で物語の世界を体験する役割も与えられています。


賢者(メンター)=ベテランキャラクター
賢者(メンター)キャラクター

・ヒーローを導く
・窮地のヒーローを助ける
・年齢や経験が豊富
賢者(メンター)は、ヒーローを助けるベテランキャラクターです。
主人公キャラクターの先生や先輩、または現役を引退していても経験豊富な年配の登場人物がベテランキャラクターに賢者(メンター)の役割が与えられています。


門番(ガーディアン)=ライバルキャラクター・強敵キャラクター
門番(ガーディアン)キャラクター

・ヒーローの行く手を阻む
・ヒーローに試練を与える
・越えなければストーリーが進まない
門番(ガーディアン)は、ヒーローの前に立ちはだかるライバルキャラクターや強敵キャラクターです。
ファンタジー小説や漫画では、敵側の登場人物として描かれる門番(ガーディアン)の登場人物。
敵でも味方でもない中立の立場で、「私を超えてゆけ」と試練を与える登場人物もキャラクターの7つの役割の中で門番(ガーディアン)をこなしています。


使者(ヘラルド)=イベントキャラクター
使者(ヘラルド)キャラクター

・物語のキーワードになる
・ストーリーを変化させる
・イベントのきっかけ
使者(ヘラルド)は、物語の分岐点になるイベントを起こす役割の登場人物です。
何か重要な物語のキーワードを知っていたり、持ち込んだイベントでストーリーを変化させるために欠かせない役割です。


変化者(シェイプシフター)=裏切りキャラクター
変化者(シェイプシフター)キャラクター

・ヒーロー側や敵側を困らせる
・良くも悪くも変化を起こす
変化者(シェイプシフター)は、裏切りキャラとも呼ばれています。
ヒーローが信頼していた仲間が実は敵側のスパイだった、または敵側で態度のおかしな登場人物は味方の重要人物だったという意外な結果を導く役どころです。
キャラクターの7つの役割の中でも変化者(シェイプシフター)の活躍は、ヒーロー側や敵側の立ち位置を大きく変化させ、ストーリーに躍動感を引き起こしてくれます。


悪役(シャドウ)=悪役キャラクター
悪役(シャドウ)キャラクター

・物語のラスボス
・倫理的に受け入れられない
悪役(シャドウ)は、言わずとしれた悪役キャラクターです。
大魔王や悪の帝王のような物語のラスボス、倫理的に受け入れられない非道な行為で読者をヒーロー側に共感させる役割があります。
これは私の感覚なのですが、ヒーロー側にいる「非常な決断をする登場人物」や「一発逆転の発想で敵側に大きな損害を与える登場人物」は敵側にとっての悪役(シャドウ)なのではないかと思っています。


道化師(トリックスター)=名脇役キャラクター
道化師(トリックスター)キャラクター

・ストーリーを和ませる
・ムードメーカー
・三枚目の役どころ
道化師(トリックスター)は、ストーリーを和ませるムードメーカーです。
天然や奇抜な行動で笑いを起こす登場人物、周りとズレた独特の価値観で突き進む登場人物は、一般的な価値観を持つ読者にとっては笑いを誘う貴重な存在です。
キャラクターの7つの役割の中では、どんな作品にも欠かすことができないのでは?と思えてなりません。




多彩な登場人物が活躍するファンタジー小説アルスラーン戦記


ファンタジー小説のジャンルでも、ヒロイック・ファンタジーやファンタジー大河小説と呼ばれている『アルスラーン戦記』には、年齢も出身も立場も異なる多彩な登場人物が出会い、それぞれの物語を作り出しています。
『プラ・バロック』で有名なSFミステリー作家の結城充考さんは、アルスラーン戦記の見どころに登場人物の多彩さをあげています。

アルスラーンの物語は、どの巻の中でも、驚くほどの速度で回転してゆきます。次々と多彩な人物が登場しては、ユーモラスに、華やかに、時には激しく互いに干渉して息を呑む場面を重ね、また新たな人間関係と戦況を生み出し続けるのです。
結城充考
アルスラーン戦記5 征馬孤影』文庫解説
出会いとすれ違いで変わる未来とは?『 アルスラーン戦記5 征馬狐影』 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ

主人公の周りだけではない遠くの出来事も、別の登場人物の目線を通してつなげることができる。
アルスラーン戦記の登場人物は、キャラクターの7つの役割を時には掛け持ちしながらこなし、物語の中を駆け巡ります。




ヒーロー=主人公キャラの登場人物


アルスラーン戦記第一部から第二部まで、主人公のアルスラーンは物語のテーマそのもののヒーローです。
ダリューンナルサスらの仲間に支えられ、試練を乗り越えて成長する姿は同じ目線で物語に入り込めるヒーローでもあります。
一方で、第一部では敵側で活躍するヒルメスは敵側の主人公アンチヒーローでもあります。
過去に不当な扱いを受け、自身が正しいと信じる「正統な王位継承」に突き進む姿は立ち位置が違うだけで主人公キャラそのものと思えます。


賢者(メンター)=ベテランキャラ


先生キャラや師匠キャラが典型的な賢者(メンター)ですが、登場人物の年齢層が若いアルスラーン戦記では「10代の登場人物にとって」と区切ってみると立ち位置がわかりやすくなります。
アルスラーン個人に忠義を尽くす武人のダリューンは、戦いのない時にはアルスラーンエラムアルフリードなどに武術を教えるインストラクターでもあります。
軍師のナルサスも同じように政治や軍事の授業を行い、若い登場人物に物語の社会で必要な知識を教えています。
積極的に武術や知識を教える2人から少し離れた位置から、ダリューンに並ぶ武人でもあり礼儀作法にも長けたキシュワードが若い登場人物の行動を見守っています。
スポーツと勉強と道徳の先生がいるアルスラーン一行は、若い登場人物が成長する環境は整っていそうですね。


門番(ガーディアン)=ライバルキャラ・強敵キャラの登場人物


悪役ではなくても、大きな壁として立ちはだかるのは、王の威厳と風格が全面に出ているアンドラゴラス三世です。
ヒーローのアルスラーンにとっては越えなければ先へ進めない壁として、アンチヒーローヒルメスにとっては暗い少年時代を過ごす原因になった存在として立ちはだかります。
主人公のアルスラーン側にとっては、パルス王国を裏切りヒルメスについた武将のカーラーンも物語の序盤の門番(ガーディアン)として立ちはだかる存在でした。


使者(ヘラルド)=イベントキャラ


物語の分岐点になるイベントを起こす役割の使者(ヘラルド)には、パルス王族の「とある秘密」を知る登場人物が当てはまります。
物語の冒頭に登場したダリューンの叔父で老将軍ヴァフリーズは、同期の武将バフマンに「とある秘密」を託します。
物語の中盤、ペシャワール城塞でアルスラーン一行とヒルメスが対面した出来事でバフマンは「とある秘密」に関するひと言を口走ってしまい、洞察力の鋭いナルサスに感づかれることに……。
その秘密は、後にパルス王妃タハミーネから語られることで、アルスラーンが行動を起こすきっかけになります。
また、細かなイベントを持ち込むギーヴも、キャラクターの7つの役割の中で使者(ヘラルド)をこなす登場人物に当てはまる1人です。


変化者(シェイプシフター)=裏切りキャラ


ヒーロー側や敵側の立ち位置を大きく変化させる変化者(シェイプシフター)は、ヒーロー側と敵側の対立を描く小説や漫画ではなくてはならない存在です。
アルスラーン戦記第一部で、わかりやすい裏切りキャラはシンドゥラ国王のラジェンドラ二世でしょう。
また、パルス軍からヒルメス、そしてアルスラーン一行に加わるクバードも、独自の価値観で立場を変える変化者(シェイプシフター)の役割がある登場人物です。
敵側のルシタニアにとっての見習い騎士エステル(エトワール)もまた、ルシタニアの政権に疑問を持ちアルスラーン一行に加わる変化者(シェイプシフター)の役割がある登場人物でもありますよね。


悪役(シャドウ)=悪役キャラ


ファンタジー小説になくてはならない登場人物は、悪役(シャドウ)でしょう。
ルシタニアの事実上の指導者ギスカールは、強大な軍事力と実務能力でアルスラーンと敵対する悪役(シャドウ)を全うする登場人物です。
また、市民への虐殺や信仰の強制など倫理的に受け入れられない非道な行為を行うイアルダボート教大司教ジャン・ボダンは、読者の嫌悪感を掻き立ててくれる悪役でしょう。
そして、蛇王ザッハークの復活のために暗躍する暗灰色の魔導師は、不気味なラスボス感のある悪役キャラとして存在感が十分ですよね。
忘れてはならないのは、アルスラーンの軍師ナルサスです。
彼の奇策で犠牲になった敵側の被害は大きく、敵対者の暗殺も考えるほど非情な考えを持つナルサスは、ヒルメス側やルシタニアにとっての悪役(シャドウ)として名高いはずです。


道化師(トリックスター)=名脇役キャラ


ストーリーを和ませるムードメーカー、笑いを引き起こす三枚目と名脇役キャラの道化師(トリックスター)として、最初に思いつくのはラジェンドラ二世です。
彼の空気を読まない態度、大げさでもあり図々しい素振りは「またか」という笑いを誘ってくれます。
活躍は十分でもプライベートで問題のあるギーヴクバードの失敗も、思わずクスッと笑ってしまう名脇役キャラでもあります。
こうした役割は、キャラクターの7つの役割の中でも特に大切なのかなぁと私は思っています。


好きな登場人物は?


ここで、読書家 花水由宇(hanami yu)がとくに好きな登場人物を2人選ばせていただきました。
10代の頃の花水(hanami)は、アンチヒーローに共感しやすい少々ひねくれた子どもでしたのでヒルメスを推していたものです。
大人になった今は、クバードラジェンドラ二世の2人です。
実は、どちらも気まぐれな変化者(シェイプシフター)と、迷台詞を語る道化師(トリックスター)の2つのキャラクターの役割をこなす登場人物なんです。

クバードの迷台詞

パルス王国では、軍人の中でも大将軍に継ぐ万騎長の地位にあったクバード
大剣を振るう武術も軍隊の指揮も優れた武将ですが、お酒の席での失態と異性関係で度々処分を受けることも……。
プライベートのだらしなさで、「ほらふきクバード」という不名誉なあだ名がつくことになります。
そんな彼が放浪の末にたどり着いた、アルスラーンが治めるペシャワール城塞の防衛戦で味方を励ますために言ったひと言がこちら。

「心配するな。ほらふきクバードがついておる。美女の群ならともかく、草原の羊飼どもに城はわたさん」
アルスラーン戦記5 征馬狐影』p42
出会いとすれ違いで変わる未来とは?『 アルスラーン戦記5 征馬狐影』 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ

周りの言うことは気にしないクバードにとっては、「ほらふきクバード」はダリューンの「戦士の中の戦士」やキシュワードの「双刀将軍」と並ぶ誇れる異名でもあります。
自虐ネタとも受け取れる台詞に、どっと起きた笑いが味方のネガティブな感情を吹き飛ばしてしまいます。
会社にいると、同僚に慕われ部下や後輩とラフな人間関係で結ばれた良い感じの先輩なのかなぁと思えてなりません。
経営者や上司の方は、クバードのような部下は対応に困りそうですね。


ラジェンドラ二世の迷台詞

ストーリーの成り行き上、シンドゥラ王国の王位継承でパルスのアルスラーン一行の力を借りて国王に着いたラジェンドラ二世。
パルスとシンドゥラは不可侵条約を結び、アルスラーン一行はペシャワール城塞への帰路についていた……のですが。
自身の欲望に正直なラジェンドラ二世は、遠征で疲労した同盟相手のパルス軍を急襲します。
結果は……。

ラジェンドラどの、このような形であなたと再会したくはありませんでした」
「おれもまったく同感だ、アルスラーンどの」
と、心からラジェンドラは賛成してみせた。
アルスラーン戦記3 落日悲歌』p188
信頼を問われる王子『アルスラーン戦記3 落日悲歌』 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ

はじめから信用されていなかったラジェンドラ二世は、ナルサスの巧妙な罠にはまり捕虜になってしまいます。
同盟相手を急襲し非難されても、空気を読まず堂々と会話を成り立たせるのは、変化者(シェイプシフター)と道化師(トリックスター)の2つ役割をこなすラジェンドラ二世ならではの台詞です。
実際の社会では、度々トラブルになっても図々しくやり過ごされてしまう、取引先の憎めない経営者といった役割でしょうか?




アルスラーン戦記第一部で活動する登場人物のまとめ


今回は小説や漫画の登場人物の7人つの役割をテーマに、日本を代表するファンタジー小説アルスラーン戦記』第一部の登場人物をまとめさせていただきました。
作家さんや文学評論家の方の中では、群像劇にも当てはまるアルスラーン戦記
多くの登場人物は7つのキャラクターの役割のどこかに当てはまり、物語で活躍しています。
皆さまのお好きな登場人物は、どんな役割でしたか?
私は、コメディな名脇役の道化師(トリックスター)の登場人物が好きですよ。




登場人物の考察ページ

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