日本で本が庶民に広まったのはいつ?
「本の歴史と未来」シリーズ、第2回は本が一般向けに販売されるようになった商業出版の始まりに注目してみます。
日本には、古くからの古典文学がありますが、一般向けに販売されるようになったのは実はそこまで昔ではありませんでした。
江戸時代まで本の商業出版はされていなかった
日本国内で本が出版された歴史は古く、聖徳太子が書かれたお経の解説書『法華義疏』が最古の本といわれています。
その後、『万葉集』や『源氏物語』のような古典も出版されていますが、いずれも1冊1冊人の手で書き写された高価な本でした。
江戸時代までの日本では、本は一般向けというよりも、お寺や貴族の研究用や武士の子どもの勉強用と限られた人だけが手にできる特別なものでした。
本が一般向けに販売されなかったのは、印刷技術が広まっていなかったことが1番の理由といわれています。
本が商業出版された江戸時代
江戸時代になって木版印刷が普及すると、本の出版は庶民の間にも広まってゆきます。
本を一般向けに販売する、商業出版の始まりともいえます。
明治から大正にかけての本の出版事情
日本に本格的な印刷技術がもたらされた幕末、そして文明開化の明治を迎えると本と読書は一大ブームを迎えます。
戦後以降の本の出版事情
戦前の昭和の時代と戦後直後は、当時の日本政府やアメリカのGHQによって出版に制限がかけられていた時代でした。
アメリカの本土占領が終わった頃からは、現代文学と呼ばれる純文学の作家さんが活躍され、大衆文学のジャンルも広がってゆきます。
文学のブームに合わせて、角川文庫、集英社文庫、講談社文庫など今見かける安価な文庫本が多く出版され、世の中に本が広まる時代が再び訪れます。
文庫本が安価に世の中に広まることで、学歴や収入に関係なく、誰もが本を読める、本当の読書の時代が訪れたといえるでしょう。
本の商業出版には印刷技術と一般庶民のニーズが関係していた
日本の出版事情を振り返ると、本は限られた人しか読むことができない特別なものから、誰もが手にすることができる一般向けに進歩しました。
本の商業出版には、印刷技術の普及が大きく影響しています。
もう1つの理由は、一般の人が本を求めているかではないでしょうか?
毎日生きるのが精一杯の戦国時代と、暮らしは大変でも生きてはいける江戸時代では、求めている娯楽も違うものです。
政権や治安が安定しているというのは、本が一般の人に広まることに大きく影響しているのでしょう。