本当に本が読みたくなる読書のブログ

読書好きのための本当に読みたい本が見つかる書評ブログです。小説、実用書、ビジネス書ジャンルを問わず紹介。読書にまつわる豆知識のお話、文章の書き方のお話もありますよ。

日本で本が商業出版されるまで

日本で本が庶民に広まったのはいつ?

f:id:jizi9:20190202135826j:plain


「本の歴史と未来」シリーズ、第2回は本が一般向けに販売されるようになった商業出版の始まりに注目してみます。

日本には、古くからの古典文学がありますが、一般向けに販売されるようになったのは実はそこまで昔ではありませんでした。

江戸時代まで本の商業出版はされていなかった

f:id:jizi9:20190202135930j:plain


日本国内で本が出版された歴史は古く、聖徳太子が書かれたお経の解説書『法華義疏』が最古の本といわれています。

その後、『万葉集』や『源氏物語』のような古典も出版されていますが、いずれも1冊1冊人の手で書き写された高価な本でした。

江戸時代までの日本では、本は一般向けというよりも、お寺や貴族の研究用や武士の子どもの勉強用と限られた人だけが手にできる特別なものでした。

本が一般向けに販売されなかったのは、印刷技術が広まっていなかったことが1番の理由といわれています。



本が商業出版された江戸時代


江戸時代になって木版印刷が普及すると、本の出版は庶民の間にも広まってゆきます。

本を一般向けに販売する、商業出版の始まりともいえます。


江戸時代の出版数は世界有数

江戸時代の日本の出版数は、ヨーロッパの各国を越えていました。

一般向けの本屋さんが開店されたのも、この時期です。

当時は出版社、印刷会社、書籍問屋などの区分けは曖昧で、本屋さんが編集から印刷までを手がけることも、印刷会社が原稿を仕入れて本を販売することもあったようです。

1つの木の板から印刷される木版印刷は、同じ本を短期間で大量に印刷することには向かないといわれています。

当時は、東京と大阪で販売される本が違うことも、同じ本でも大きさ図解、イラストが違うことはよくあることでした。


江戸時代に流行した本

木版印刷が普及し、本屋さんができたことで、読書の文化はようやく一般庶民のものになりました。

この頃流行した本には、織田信長の公式記録『信長公記』、ホラー作品の『古今百物語評判』、ボーイズラブの『好色一代男』などが流行したようです。

織田信長が活躍した時代から近いこともあり、当時は武士の活躍が世の中のエリートコースでもあったことから、現代の松下幸之助スティーブ・ジョブズのような憧れの対象だったのでしょう。



明治から大正にかけての本の出版事情

f:id:jizi9:20190202140033j:plain


日本に本格的な印刷技術がもたらされた幕末、そして文明開化の明治を迎えると本と読書は一大ブームを迎えます。


活版印刷の発展と本の出版

幕末の1860年年代に、オランダから活版印刷と活字を複製する紙型の技術が伝わると、日本の印刷物は木版印刷から活版印刷へと変わりました。

さらに、片面印刷の紙を折り曲げて閉じる和書から、両面印刷の紙を厚紙とノリで閉じる洋書への本の形も変わりました。

大きさや文字の規格の揃った洋書は、大量生産に向き、令和の時代ほどではありませんが当時としては一般庶民が購入しやすい価格で販売されるようになりました。


明治から大正にかけて花開いた日本の近代文学

幕末から明治にかけては、1872年に出版された福澤諭吉がの『学問のすゝめ』は有名すぎるほどです。

明治になってしばらくは、政治や哲学的な思想の本が多く、1885年に坪内逍遥の『小説神髄』、翌年の『小説総論二葉亭四迷から一般庶民向けの娯楽としての本が出版される時代が訪れます。

文章も江戸時代までの漢文から、話し言葉に近い「だ・である」調・「です・ます」調に変わり、多くの人が読める本へと変わります。

その後の明治から大正にかけては、日本の文学の基礎が出来上がった時代。

近代文学と呼ばれる時代をまとめるには、今回の1記事では足りないほどです。



戦後以降の本の出版事情


戦前の昭和の時代と戦後直後は、当時の日本政府やアメリカのGHQによって出版に制限がかけられていた時代でした。

アメリカの本土占領が終わった頃からは、現代文学と呼ばれる純文学の作家さんが活躍され、大衆文学のジャンルも広がってゆきます。

文学のブームに合わせて、角川文庫、集英社文庫講談社文庫など今見かける安価な文庫本が多く出版され、世の中に本が広まる時代が再び訪れます。

文庫本が安価に世の中に広まることで、学歴や収入に関係なく、誰もが本を読める、本当の読書の時代が訪れたといえるでしょう。



本の商業出版には印刷技術と一般庶民のニーズが関係していた

f:id:jizi9:20190202140059j:plain


日本の出版事情を振り返ると、本は限られた人しか読むことができない特別なものから、誰もが手にすることができる一般向けに進歩しました。

本の商業出版には、印刷技術の普及が大きく影響しています。

もう1つの理由は、一般の人が本を求めているかではないでしょうか?

毎日生きるのが精一杯の戦国時代と、暮らしは大変でも生きてはいける江戸時代では、求めている娯楽も違うものです。

政権や治安が安定しているというのは、本が一般の人に広まることに大きく影響しているのでしょう。

www.yu-hanami.com




にほんブログ村 本ブログへ