『砂漠』伊坂幸太郎
著者 伊坂幸太郎
出版社 株式会社新潮社
分類 小説、青春小説
出版日 2005/7/1
読みやすさ ☆☆★読みやすい
今月の本は、伊坂幸太郎さんの『砂漠』。
『グラスホッパー』『マリアビートル』と並んで直木賞候補作品にもなった、青春小説の名作ですよ。
麻雀にちなんだ6人の登場人物
物語の主人公は地元から県をまたいで進学した男子大学生 北村。
初対面の鳥井から、鳥瞰的(ちょうかんてき)といわれるほど離れた目線で世の中を見る物語の語り部と、麻雀にちなんだ5人の登場人物が揃う物語。
北村
岩手県出身の大学生。
世の中を悟ったような、どこか冷めた目線で周り見つめ、地元で公務員になり安定した暮らしを望む青年。
個性的な仲間と刺激的な出来事に関わっていく中で、客観的に記録していた出会いを、いつか忘れられない思い出へ変えてゆくことになる。
鳥井
神奈川県出身で、南とは中学校からの同級生。
自分の興味と世の中に敏感なイケメン大学生。
熱くなりやすく冷めやすくもある感情で、グループが何かに進むきっかけになる人物。
鳩麦
北村たちの大学生グループの1歳年上、仙台市内で暮らすアパレル店員。
親しみやすい童顔と屈託のない雰囲気で、初対面で惹かれる男子学生も…。
入学間もなく起きたある出来事から、大学生グループに加わることになる。
砂漠の間近のオアシスが物語の始まり
仙台市内の大学へ進学した主人公 北村、クラス初の飲み会の席でたまたま近くに座った鳥井と南。
離れた席で男子学生に囲まれる東堂を眺めながら、遅れてきた西嶋の個性的な演説を聞き流しては笑う。
ありきたりなようで、過ぎてしまうと戻れない青春の距離感。
似通った価値観の地元を飛び出して集う大学生活、青春の物語の始まりです。
物語の舞台は仙台市、少しずつ広がる世界
『砂漠』の舞台は、東北最大の都市 仙台市。
学生街から住宅街、下町のような飲食店や繁華街もある、刺激には困らない程よい都会。
自宅と学校という狭い世界に慣れた高校生活を卒業し、身近な生活圏内のほんの少し「先に何かある」と気持ちが躍る世界観です。
青春はオアシスの果て、その先に広がる広大な砂漠
大学というオアシスの外に広がる、広大な砂漠の社会。
オアシスと砂漠の曖昧な境界まで進んだ彼らは、その先の道のない旅へ向かう僅かな休息を過ごしているだけなのかもしれない。
感情と思考が真正面から交差する青春時代は、過ごしていると長く、過ぎてみるとあっという間の出来事。
青春を思い出したい人、社会という砂漠で歩き疲れた人は、手にとって開いてみてはいかがでしょうか?