窓は閉まっているだけ
春夏のような賑わいが遠ざかった朝。
日の出が遅くなってからの朝は、とても静か……と思い込んでいた。
無音の朝と鳥の声
遅くなった日の出は、人の起床時間も遅くしようとする。
曇の日は最悪で、鈍色の空から明るいのか暗いのかわからない程度の寂しい明かりが照らすだけ。
真夏の陽射しには気休めにしかならないレースのカーテンでも、十分に遮られてしまう。
厚みのある壁と二重の窓は、断熱よりも防音の性能が優れていて、今の時計の音だけが室内に響いていた。
外出自粛でも季節の変化が楽しめるように始めたベランダガーデニング、朝の水やりは毎日の習慣として根付いている。
ベランダの花にあげる朝ごはんは、給湯器で温まったぬるま湯に変えていた。
居間の二重窓の外側は、断熱性能が優れていることが確かなように引くときに少しだけ抵抗を感じる。
満員電車から降りる通勤客のように、開けられた窓から入る冷気が肌を撫で、自然と体は小さくなる。
湯気をあげるジョウロから、ベランダの花にぬるま湯をかけていると、音だけは懐かしく感じ、聞き入ってしまう。
朝早くから賑やかなスズメの雑談、今日はどこに食事に出向こうか話すカラスの会話。
車の行き交う音は近く、微かに排気ガスの匂いが立ち込める。
無音の朝は室内だけで、外の世界は変わらず雑多な音が行き交っていた。
二重の窓と高気密の北国の夜
寒くなると締め切った家の中が無音になるのは、北国や雪国で暮らす方には身近なことでしょう。
寒さと結露対策のため、窓という窓は外側と内側の二重窓。
最近では1枚の分厚い窓で気密性を高めている住宅もあります。
こちらでは、換気口は閉めるもので、締め忘れていたら気温は10℃を下回ってしまうこともあります。
二重窓と断熱材入の分厚い壁に守られた北国の夜は無音で、静かな環境で寝たい方にはうってつけ。
ただ、朝の車が行き交い鳥たちの会話が聞こえる音が聞こえなくなるのは、寂しいことです。
冬は気持ちも高気密
秋から冬にかけて気分が沈みがちになる冬季うつ病は、テレビで取り上げられるほど有名になりました。
専門の先生が解説された、「日照時間の変化による自律神経の不調」が1番の原因で、他にも「生き物に元々ある冬眠の準備」「体温の変化」といくつかの原因があるようです。
秋から冬にかけて気分が沈みがちな私が気がついたのは、外の音のように変わらない環境もあって、聞こうとすれば聞けること。
そして、必ず春が来て暖かく賑やかな夏が訪れるということでした。