ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 J・K・ローリング
著者 J・K・ローリング(J・K・ローリングさんの紹介〜ハリーポッターを生んだお母さん - 本当に本が読みたくなる読書のブログ)
訳者 松岡佑子
出版社 株式会社静山社
分類 海外文学、児童文学
出版日 2004/9/1
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい
ハリー・ポッターシリーズの第5弾です。
昨年に紹介させていただいたハリー・ポッターシリーズ前半4部作のテーマは「大人も子どもも楽しめる」がテーマでした。
ハリー・ポッターシリーズも5作目の『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』以降は、シリーズの核心に迫る内容が続きます。
そして、16歳を迎えたハリー・ポッターたちも、大人でも子どもでもない繊細な時期を迎えます。
どちらかというと、ハリー・ポッターシリーズ後半3部作は大人向けの内容にも思えます。
そこで、ハリー・ポッターシリーズの「大人の読み方、子どもへの勧め方」をテーマにお送りさせていただきますね。
ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団の大人の読み方、子どもへの勧め方
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」を読まれるお子さんは、きっと小学校4年生より上くらいではないでしょうか?
4年生以上にもなると、一緒に読むというより、親御さんとお子さんそれぞれが物語を楽しむことができるはず。
ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団〜子どもたちへ「行動と責任」「世の中の理不尽さ」を知ってもらう
16歳を迎えたハリー・ポッター。
ホグワーツ魔法魔術学校では、上級生に当たる5年生を迎えました。
大人たちから守られた中で、冒険を続けていた今までとは違い、学校生活や外での暮らしには責任を伴います。
夏休みの外出中に吸魂鬼ディメンターに襲われたハリーは、自分と従兄弟のダドリーを守るため普通の人間マグルの目の前で魔法を使うことに………
魔法界では、マグルの前で魔法を使うことには厳しい規制があり、ハリーも責任を追及されることになります。
そして、学校生活では魔法省から派遣された教師ドローレス・アンブリッジが「闇の魔術に対する防衛術」の教師に就任。
両親とも魔法使いの純潔主義、魔法使い以外は劣っていると考える差別主義、そして独裁的な態度で生徒や教師に接するドローレス・アンブリッジ。
子どもたちには物語の中から、大人の中には子どもにとって理不尽に接する人間もいることを知って、どう受け入れるのかを学んでほしいですね。
大人の読み方は伏線と隠れたキーワードを読み解くミステリー
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」より後のハリー・ポッターシリーズは、どちらかというと大人向けではないかと、私は思います。
今回の物語では、アルバス・ダンブルドアが中心の「不死鳥の騎士団」、復活したヴォルデモート卿一派「死喰い人」、ヴォルデモート卿の復活を認めず保身を図る「魔法省」と3つの組織が対立。
その中で、「不死鳥の騎士団」はヴォルデモート卿一派「死喰い人」が魔法省内にある「あるもの」を突き止めて、手に入れるのを阻止するために活動します。
この「あるもの」の存在が、これから先のシリーズの核心に迫るキーワードにもなることでしょう。
注目の登場人物
ハリー・ポッター
16歳になったハリー・ポッター。
4年生で「三大魔法学校対抗試合」の代表選手に選ばれ、ライバルのセドリック・ディゴリーを失いながらも優勝してから半年。
年齢を増すたびに正義感は強く、仲間想いの少年に成長。
ハリーが目撃したヴォルデモート卿の復活を認めず、真実に蓋をしてしまおうと考える魔法省。
真実や正しいと信じることが、いつも正しく扱われるとは限らない。
ハリーの正義感は、自分たちだけが大切な大人たちの持つ権力と向き合うことに………
ルーナ・ラブグッド
今作から登場するルーナ・ラブグッド。
不思議な眼鏡をかけ、ゴシップ誌を逆さまに読む。
この様子だけで、どんな性格なのか伝わるほどの「不思議」な女の子。
彼女もまた、他の大勢の価値観から離れている存在として扱われ、彼女自身も周りから1歩離れた目線で大勢の価値観を見ていた。
シリウス・ブラック
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』から登場した、ハリーの名付け親で両親の親友シリウス・ブラック。
ゲイリー・オールドマンさんが演じる長髪でハリーへの愛情と、情熱が溢れ出すイメージが強いシリウス。
本の中のシリウスも、まさに感情を前面に出す子ども心を忘れない男性。
逃走犯の立場の彼は、自宅から不死鳥の騎士団へ参加し、陰ながらハリーを支える存在に。
シリウスとハリー、お互い暖かい「家庭」というものを知らずに育った2人だけの家族の形………。
フレッド、ジョージ・ウィーズリー
シリアスな展開を迎えるようになった後半3部作でも、2つの太陽のように周囲を照らすフレッド、ジョージ・ウィーズリー。
ハリーの親友ロンの2学年上の双子の兄。
彼らのやんちゃなイタズラは、すっかりホグワーツの名物に。
そして、双子の思い描く壮大な野望とは………。
ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団から見る魔法界の勢力図
不死鳥の騎士団
タイトルにもなっている不死鳥の騎士団は、ハリーたちの両親世代が20代の頃、魔法界を恐怖と闇で覆い尽くそうとしていたヴォルデモート卿一派の「死喰い人」に対抗して生まれた組織。
創設者のアルバス・ダンブルドアを始め、凄腕の魔法使いたちが名前を連ねる不死鳥の騎士団。
魔法使いの家庭に生まれた純血と、普通の人間マグルの家庭に生まれた者を差別しない平等主義の下魔法界の多くの支持を集め、多くの殉職者を出しながらも今の平和な魔法界を築いた。
魔法界を平和に導いた不死鳥の騎士団は、ヴォルデモート卿の復活への方針の違いから魔法省に対して表立った行動は起こせず、秘密の活動場所で「死喰い人」の動向を探ることに。
ヴォルデモート卿一派「死喰い人」
純血の魔法使いだけが「本当の魔法使い」と考え、優れた純血の魔法使いがマグルを支配するという考えの下に集った組織。
純血主義のカリスマ的存在、ヴォルデモート卿に絶対的な忠誠を誓い、魔法界を恐怖と闇で覆いつくそうとした「死喰い人」。
かつて、ヴォルデモート卿が姿を消した後は忠誠を誓っていた者はアズカバンの牢獄へ、欲望や恐怖で従っていた者は主人を捨てて魔法界へ戻った。
そして、10数年後に復活したヴォルデモートの元に再び仮面を被り集った死喰い人、仮面を捨てて逃げ出した者。
自分たち以外を認めない価値観、欲望、恐怖。
人なら誰もが少しは持つ心の弱さ、そこに染み込むように再び広がる「死喰い人」の活動。
魔法省
いつまでも今のままでありたい。
長期政権に起きたヴォルデモート卿復活という脅威、それを認めようとしない魔法大臣コーネリウス・ファッジ。
脅威に目を瞑り、脅威論を唱える不死鳥の騎士団を世の中を混乱させようとしていると危険視する。
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』では不死鳥の騎士団、死喰い人、魔法省それぞれが主張の違いで向かい合う三角関係の構図です。
正義と悪、白と黒と単純に2つに分かれて対立していないところが現実の世界に近いですよね。
児童文学の域を出て、よりリアルな世の中を描いた作品に見えてきますよ。
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』で注目するキーワードは「真実」「信頼」
「不死鳥の騎士団」「死喰い人」「魔法省」、平等主義と純血主義、そして政権の保身。
主義の入り乱れる中で、大人たちの世界に触れ、世の中の理不尽さを目の当たりにするハリーたち少年少女魔法使い。
物語のキーワードは、「真実」。
起きていること、主義主張の中にある本当のこととは?
そして、「信頼」。
信じることができる者は誰なのか?
ハリーの成長とともに、物語のテーマも難しくなっていきます。
ハリー・ポッターシリーズに対象年齢があるなら、きっとハリーたち主人公の年齢と同じくらいの方にとって身近なテーマになるのかなぁと思います。
ハリー・ポッターシリーズ前半4部作のまとめはこちら↓
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