『ブッダが死ぬ前に繰り返し説いた 悩みに強くなる考え方』
著者 鳥沢廣栄
出版社 株式会社 彩図社
分類 実用書、哲学と考え方
出版日 2018/4/18
読みやすさ ☆☆★読みやすい
悩み事を、仏教の考え方を元に解決する『ブッダが死ぬ前に繰り返し説いた 悩みに強くなる考え方』の紹介。
第3回は、「悩みに備える」「悩みが増えないように」する考え方を取り上げてお伝えしますね。
悩みに備える〜悩みと不安に強くなる2つの考え方
大乗経典の『涅槃経』で、それまでの経典に説かれていない教えが、2つあります。
1つは、「一切衆生悉有仏性(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)」であり、もう1つは「常楽我浄(じょうらくがじょう)」です。
これは、それまでの経典には見られない画期的な教えで、悩みへの耐性をつけるのにうってつけの考え方です。第4章 仏教的肯定感を身につける p124
「一切衆生悉有仏性(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)」、常楽我浄(じょうらくがじょう)」、どちらも難しそうな意味がありそうですね。
本来の意味は難しくても、現代的に言い換えることで悩み事を抱え不安になってしまうことを防ぐ考え方です。
「悩み事に備える」ことを、⑴悩み事を増やさない⑵ 悩み事が起こらないように・起きても対応しやすくする、2つに分けて考えてみます。
悩み事を増やさない〜自分の可能性を認めて前向きに生きる
「悩み事に備える」ことの1つ目、⑴悩み事を増やさない考え方には、「一切衆生悉有仏性(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)」の教えがぴったりと書かれていました。
「一切衆生悉有仏性」は、全ての人には可能性があるから、選択肢を選べるように頭を柔らかく考えましょうという教えで、⑴悩み事を増やさない大切なポイントになります。
一切衆生悉有仏性(いっさいしゆじょうしつうぶっしょう)とは?
「一切衆生悉有仏性」とは、「全ての生きとし生けるものには、仏性がある」という意味であり、それをさらに発展させたのが「三回草木悉有仏性(さんかいもくしつうぶっしょう)」です。
中略)
とはいえ、現代人からすると、急に「仏性」といわれてもイメージしにくいと思います。そこで、これを「可能性」と置き換えて読んでみましょう。
「覚り」とは、難しく言えば究極の真理に至ることですが、努力によって誰でも究極の真理に至れるのなら、それは努力によって人間の可能性が広がるということ。「誰にでも覚る可能性がある」ということは、「誰でも何らかの可能性がある」と解釈できます。第4章 仏教的肯定感を身につける p124
仏教の言葉は、現代の言葉に置き換えるととてもわかりやすくなります。
逆に科学が発展して、心の仕組みが解き明かされてきていることと、インターネットで世界中が時間をかけずにつながった今だからこそ理解がしやすいのかもしれません。
悩み事を増やさない考え方の1つ目は、「可能性」は必ずあるということを覚えておくことにしましょう。
可能性は埋もれているだけ
誰にでも何らかを成し遂げる可能性がある、と言われても、「そんな才能なんてない。可能性のある人なんて、ほんのわずかだ」と思われることでしょう。これに関しては、『涅槃経』にも説かれています。「全ての生きとし生けるものに仏性があると言っても、覚れない人もいるのではないか」という問いがあるのです。
中略)
それに対してお釈迦様は、仏性は誰にでもあることを強調します。それでも覚れない人がいるのは、汚れや欲望、煩悩などにより、仏性が埋もれてしまっているからなのです。第4章 仏教的肯定感を身につける p127
悩み事を増やさない考え方の2つ目のステップでは、「可能性はあっても埋もれてしまっていて気づかない状態」にあるといわれています。
例えば、「今の収入では家族でレジャーを楽しむほどの生活ができない」ことが悩みだとしましょう。
すると、「収入が足りない」「レジャーが楽しめない」悩みから、「ストレスがたまる」「家族がギスギスとする」といった悩み事が増えてきます。
そこで、「収入が足りない」悩みを「収入を増やす」「節約する」方法で解決しようとします。
「収入を増やす」といっても、「方法」も「時間」もない。
「節約する」といっても、付き合いのお酒の席は仕事柄欠かせない、と行き詰まってしまいます。
「方法」がないなら、今まで取り組んだことがない副業が1つの方法かもしれません。
そのための「時間」は、もしかしたらお酒の席を減らすことで作れるのかもしれません。
お酒の席を減らしても、仕事に大きく影響することは最近では多くはないのではないでしょうか?
お酒の席が減って「節約」ができ、「時間」ができたことで「収入を増やす」副業に取り掛かることができる可能性があります。
これは、私が考えた例えですが、悩み事を増やさないためには、視点を変える頭の柔らかさも必要なんですね。
選択肢はなくならない
1人の人間が最終的にどのような結果を残すかは、死ぬまでわかりません。いろいろな才能を発揮したとしても、途中でさぼったり、怠けたりしてはわ才能を伸ばしきれないで終わってしまうこともあります。しかし、それでも、そこから別のことで復活することもできるのです。
中略)
もちろん、目標としていたことに挑戦し続けても、才能がないと痛感したり、今後のことは考えられないと感じるケースもあるでしょう。そんなつらい状況に置かれれば、もう自分の道はないと嘆いたり悩んだりするのも、無理はありません。
そうした人は、こう考えましょう。
「1つの才能が終わったかもしれないが、自分には別の才能があるに違いない。それを見つけよう」
簡単に価値観を変えることはできませんがら何もしなければ自分が何も変わらないことは、はっきりしています。
中略)
皆さんも経験があると思いますが、いきなり頭を切り替えようとしても、なかなかうまくいかないものです。
中略)
そんな苦労を味わわないよう、「自分にはまだ選択肢があるんだ」と肯定的な考えを持ち続けてほしいのです。第4章 仏教的肯定感を身につける p138〜p140
悩み事を増やさない考え方の3つ目のステップは、どんな状況でも、いくつになっても選択肢があると考えることとあります。
もし、今頑張っていることが終わってしまったとしても、これから先のことは「誰もわからない」でしょう。
今の自分にとって、都合のいい選択肢ではないのかもしれません。
その結果は、後になってみなければわからない。
考えを切り替えることは、直面してからでは辛いこと。
それなら、行き詰まってしまう前から「選択肢は他にもある」と候補をいくつか持っておくのが大切なポイントなんですね。
悩みごとが起こらないように〜起きても対応しやすい考え方を身につける
「悩み事に備える」ことの2つ目、⑵ 悩み事が起こらないように・起きても対応しやすくする方法には、「常楽我浄(じょうらくがじょう)」の中にとても実用的な考え方があります。
中でも、「いい状態のときの習慣を続ける」は、とても実践的で理解しやすい取り組みですよ。
常楽我浄(じょうらくがじょう)とは?
苦を楽だと思うのは間違っているが、その逆に楽を苦と思うのも間違っている、その他も同じだ、というか教えが説かれているわけです。
中略)
人生を悲観的にではなく、ポジティブに生きよう。それが、常楽我浄が説いた教えです。悩みや苦しみのなかでも、自分がそれらと真摯に向き合い、問題の解決に努めれば、必ず報われる。現代人にとっても、納得できる考えではないでしょうか。第5章 悩みに負けない思考法 p152〜p153
「ポジティブに生きる」
なんでもポジティブに考えられる人は、多くはないと思います。
私はネガティブな方ですし…。
この考え方、「苦を楽だと思うのは間違っているが、その逆に楽を苦と思うのも間違っている」ことを、私はこう捉えてみました。
「悩み事の結果、最悪のことも、最高のことも起こらない」
これは、もちろん悩み事に真面目に向き合ったときの結果です。
過去には、最悪のことが起こったこともあります。
そのときは、冷静とはいえない判断ミスや、余計なことを沢山していた結果だったのかなぁと思います。
悩み事への対応には、「関わる人が不利益にならない」か、「迷惑は最小限」かを目安にします。
いい状態のときの習慣を続ける
「常」を意識する
常に同じ状態が続くことはありません。それは真理ですから、どうすることもできません。しかし、人はいい状態を保ちたいと望みます。実は、その望む気持ちが大事なのです。
もし、いい状態を維持したいのであれば、自分自身の行動をよく律し、さらには変化することを想定して備えておく必要があります。なぜなら、そうしたいい状態を壊すのは、自分自身だったりするのです。
幸せな状態が長く続くと、人は油断しやすくなります。家族を例に考えてみましょう。「これくらいのことをしても家族が壊れることはないだろう。今の幸せは続くだろう」と思いこんでしまうと、幸せは遠のいていきます。帰宅が遅くなったり、家庭のことをおろそかにしたり、不倫に走ったり、ギャンブルに手を出したりと、道を外すのです。
こうならないためには、いい状態のとき、幸せな状態のときを維持しようと意識し、努力することが大事なのです。これが「常」を意識するということです。第5章 悩みに負けない思考法 p154〜p157
「いい状態のときの習慣を続ける」
『ブッダが死ぬ前に繰り返し説いた 悩みに強くなる考え方』の中で、1番実践的で理解しやすい取り組みだと感じます。
いい状態が壊れて、辛い状態になるとき、中には交通事故や災害のようにどうしょうもない出来事もあります。
それでも、普段の暮らしで起こる悪い出来事の原因を突き詰めると、自分のふとした行動にあったりします。
私は、考え方や気持ちを同じペースで保つことは難しいです。
それなら、普段の行動の中でいい状態のときの行動を欠かさず続けることが大切。
私なら、仕事は職場で片付けて家では家のことをする、かなと思います。
悩みはみんな同じなんだと受け止める
「浄」を意識する
「全ての存在は本来、清浄である」ということは、極端な言い方をすれば「どんな罪人であってもらその人は本来、清浄である」という意味にとることができます。つまり、罪を犯した者であっても、本当は清浄なのだ、清らかなのだ、ということですね。ならば、ほんの些細な罪を犯した者や失敗をした者は、当然ながら清浄です。
中略)
どんなに失敗を繰り返しても、周囲からダメな人間だと言われても、罪はありません。罪がないならば、許すこともできるでしょう。すなわち、自分で自分を責めて悩んでいる人も、「浄」の教えを意識すれば、たとえダメな自分であったとしても、それを許すことができるようになるのです。自分を責めて悩むような状態から、脱することができるはずです。
これと同様、「浄」を意識すれば、他人に対しても「許す」ことができるようになります。なぜなら、「浄」の教えに従えば、他人も自分と同じように「本来、清浄」だからです。
「浄」とはつまるところ、「自他平等」にも通じるのです。自分も他人もみんな清浄である、みんな同じなのだ、という思いです。そう思えるようになれば、他人に対して寛容になることができます。すると、心も随分と楽になるのです。「浄」を意識し、理解することにより、悩みに対して強くなることができるのです。第5章 悩みに負けない思考法 p168〜p169
「自分に厳しく、人に優しく」
努力の基本的な考え方ですが、自分に厳しくしすぎると、人に優しくできないものではないでしょうか?
それなら、「全ての存在は本来、清浄である」を元にこう考えてみます。
「自分に優しく、人にも優しく」
これなら、簡単にできそですね。
ポイントは、本の中にも書かれている「他人に対して寛容になること」ではないでしょうか?
悩み事解決の方法は「悩む前」にある
悩み事解決に役立つ『ブッダが死ぬ前に繰り返し説いた 悩みに強くなる考え方』、第3回は「悩み事に備える」ことをテーマにお伝えしました。
「悩み事に備える」 ことを、⑴悩み事を増やさない⑵ 悩み事が起こらないように・起きても対応しやすくする2つの方法に分けてみます。
本の中では、『涅槃経」に書かれている「一切衆生悉有仏性(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)」、「常楽我浄(じょうらくがじょう)」の2つの考え方が紹介されています。
「一切衆生悉有仏性」は、全ての人には可能性があるから、選択肢を選べるように頭を柔らかく考えましょうという教えで、⑴悩み事を増やさないことに役立ちます。
「常楽我浄」の「常」には、「いい状態のときの習慣を続ける」という実践的な考え方かまあり、⑵ 悩み事が起こらないように暮らすため、自分の普段の生活に当てはめると取り組みやすい習慣です。
悩み事が多い人にぜひ読んでほしい
鳥沢廣栄さんの『ブッダが死ぬ前に繰り返し説いた 悩みに強くなる考え方』を、3回にわたって紹介させていただきました。
紹介記事を書いていると、こう思います。
悩み事解決の方法は「悩む前」にある。
悩み事は、1度悩んでしまうと気持ちが落ち着かず、冷静に向き合うことができなくなります。
これが、悩み事の悪循環・悩みのるつぼにとらわれてしまう原因。
そうならないためには、「悩む前」が大切です。
⑴悩み事を増やさない⑵ 悩み事が起こらないように・起きても対応しやすい考え方と習慣を身につけ、「悩み事に備える」ことが肝心なんですね。
私のように、悩み事が多い人には、ぜひおすすめの1冊です。
悩み事は絶えないのは誰でも同じ…
悩み事があるのは、当たり前のことで、それは誰でも同じ。
「収入」の高さで、収入が足りないことが悩みの人もいれば、今の高い収入を保てるかが悩みの人もいます。
見方が違うだけで、案外悩み事の原因は近いのかもしれませんね。
そらでは、著者の鳥沢廣栄さんの言葉で締めくくらせていただきます。
苦しい、無常だという現実があるとはいえ、同時に同じ世界において、楽しいことや常住といった価値観がある。
それに気づくことができればら現実を否定するのがおかしいことに気づくはずです。まずは現実を受け入れる。そうすれば、よりよい生活の送り方を考えられるようになるのです。現実から逃げたとしても、我々が生きる世界は変わりません。それならば、世界を見る目を変えたほうが、視野を広げることができます。これについては本書で繰り返し紹介してきたため、ここまで読んでいただいた方にはよくわかっていただけたと思います。
第5章 悩みに負けない思考法 p172〜p173
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