シリウス・ブラック教授の闇の魔術に対する防衛術
ハリーポッターシリーズの妄想がなかなか止まらない花水(hanami)。
ハリーポッターシリーズの人気登場人物シリウスが生きていて、ホグワーツの先生になった物語を書か綴った後は、授業風景を想像してみたくなりました。
※本作品はJ・K・ローリング著作ハリー・ポッターシリーズの二次創作物に当たります。二次創作物に関する但し書きなどは末尾をご参照下さい。
粉々呪文レダクト
「さあ、集まったね。今日は、君らにとっていい呪文を学べる日になる」
ホグワーツ魔法魔術学校の闇の魔術に対する防衛術は、3年生から5年生までは2つの寮が合同で授業を受けることになっていた。
1つは、6年生と7年生に個別的な補修時間が必要な専任教授の負担軽減、もう1つは寮対抗で魔法の技術を競うためにあった。
今日が2回目のグリフィンドールとレイブンクローの合同クラスの生徒たちは、まだお互いを探り合うように遠慮しつつも、ユーモアが豊かなシリウスの授業を楽しんでいる。
「さて、君らは旅に出たとしよう。そこで恐ろしい外物に追われる、だが道の先にはこんな大きな岩で通れなくなっている。どうする?」
シリウスは悪戯心のこもった笑みで、大きな岩をどのように始末するかを生徒に問いかける。
「まず怪物をやっつける」
「ええ、私たちならわけないわ」
レイブンクローの双子の悪戯姉妹クリス・サンダースとジェニファー・サンダースが真っ先に声を上げる。
「そうだな、マネ妖怪とイタズラ妖精が相手なら、やっつけられるだろう。なら、怪物はドラゴンにしよう」
「浮遊呪文を使います先生、もう1年生から習っているから。岩が、大きすぎるかもだけど…」
1年生の頃から闇の魔術に対する防衛術に積極的なミハエル・ウィーン、呪文学でも優秀な成績の彼女が浮遊呪文を提案した後、岩の大きさと呪文の効果を慎重に分析する。
「浮遊呪文ウィンガーディアム レビオーサは、便利な呪文だ。君が冷静で集中できる状況なら、この岩も動かせるはずだ」
的を得たミハエルの意見を受け止めた後、「魔法を使う状況」を付け加えてシリウスは新しい提案をする。
「ドラゴンに追われ、君らは急いでいる。浮遊呪文に集中する時間はないはずだ、そんな時は、これだ。粉々呪文レダクト!」
光の球が命中した大きな岩が弾け、小さな砂利のように砕け散った。
「反対呪文はこれだ、レパロ(Reparo / 直れ)修復呪文!」
砂利が集まり、また大岩が姿をあらわす。
生徒たちの驚きと歓声が湧き、サンダース姉妹はイタズラに使えそうな呪文に顔を合わせて笑顔を見せる。
「粉々呪文を勉強した子は?」
「はい!粉々呪文は物体を粉々にする呪文です。1回の呪文で粉々にできるのは、“同じ組成の固体”に限られます。例えば、水の入った水槽に粉々呪文をかけると水槽のガラスは粉々になるけど、中の水は粉々になりません。修復呪文レパロで直せるのもガラスだけで水は元には戻らないと書いていました」
「すごいなミハエル、グリフィンドールに5点をあげよう。さぁ、その石を粉々にして元に戻す。1番早く3回できた子にコレをあげよう」
グリフィンドールの優等生ミハエルを褒めたシリウスは、生徒たちの前に拳大の石を出すと黄色いレンガを出してみせた。
W.W.Wと書かれたロゴは子どもたちに人気のイタズラ用品ショップ「ウィーズリーウィザードウィーズ」。
「この店の商品でハズレはない」と言われるほど爆発的な人気の商品になっていた。
「レパロ!粉々!おかしいな…」
石に粉々呪文を命中させる生徒が増える中で、グリフィンドール生ルード・ラーズラーの石は微動だにしていなかった。
「ルード、まずは粉々にしてからだ。レダクト!粉々」
ルードの手を支え石に粉々呪文を命中させるシリウス。
どんな呪文でも成功する方が珍しいルードは、闇の魔術に対する防衛術や呪文学の成績は悲惨なものだった。
「成功を重ねることが大事なんだルード。失敗は誰でもすることだ、それをいちいち悩んではいけない。さあ、やってみろ」
「レダクト!粉々!」
ルードの粉々呪文は、石を欠けさせただけだったが、彼にとっては珍しく成功した呪文だった。
粉々呪文競争の1位は、レイブンクローの双子の悪戯姉妹の姉のクリス・サンダースがグリフィンドールの優等生ミハエル・ウィーンに競り勝った。
ウィーズリーウィザードウィーズの「自動修復レンガ〜ストレスの解消に」を嬉しそうに手にするトーマス。
闇の魔術とは?
「今日は、君たちに深刻なことを知らせなければならない。来週の特別講義が始まる前に、君たちは今日、ここで教科書を読まなければならない」
3年生が始まり2カ月が過ぎ、生徒同士もお互いの雰囲気を掴んだグリフィンドールとレイブンクローの合同クラスから笑いとブーイングが巻き起こる。
「ブラック先生!今日は粉々呪文を極める、大きな岩を粉々にする授業じゃないんですか?」
「いい質問だミハエル、クワッフルくらいの岩を粉々にできる君の努力に、グリフィンドールに5点あげよう」
レイブンクロー生からは、さらにブーイングが起きクリスとジェニファーの双子の姉妹が思いつく限りの冗談を飛ばす。
「わかった、可憐な姉妹が昨日打ち上げた花火は素晴らしかった。レイブンクローにも5点あげよう。さあ、教科書64ページを開いて」
保護者たちに残る不安を他所に、シリウス・ブラック教授の闇の魔術に対する防衛術の授業は生徒たちの1番人気を競っていた。
シリウスには珍しい形の、教室での座学が始まる。
「ニッフラーの尻尾に………、いや手には」
「ルード、64ページの第3章だよ」
ほとんどの授業で失敗を繰り返しているグリフィンドール生 ルードの顔がみるみる赤くなり、次の生徒が正しいページを読み上げた。
「さあ、ここで質問だ。闇の魔術とは何か?早い者勝ちだ、ミハエル」
闇の魔術に対する防衛術では、抜群の成績のグリフィンドール生ミハエルが素早く手を上げた。
いつものシリウスの授業に慣れ、予習をしていないのにもかかわらず。
「闇の魔術とは、主に対象に害をなすため、支配するため、また殺害知るために使われる魔法の総称。闇の魔術には許されざる呪文から有毒な魔法薬の醸造、闇の生物の飼育まであらゆる呪文や行動が含まれており、そのほとんどが違法かあるいは魔法界で忌避されています。先生」
「素晴らしい。グリフィンドールに5点。では、次の質問。許されざる呪文はもちろん闇の魔術だ。例えば、爆発呪文コンフリンゴ(Confringo)がある。障害物を避けるのに役に立つ魔法だが、人を傷つけることもできる。これは闇の魔術かな?」
「爆発呪文は、5年生の呪文学で習う魔法ですよ」
「ホグワーツで闇の魔法なんか教えるはずないじゃない」
レイブンクローの双子の姉妹が真っ先に声を上げる。
「あの、ダメなんじゃないかな。汚いことに使ったら」
ルードの的外れにも思える発言にささやかな笑いが起きたが、シリウスは手を差し向けて続けるように頷く。
「もっとお小遣いが欲しいとか、悪いことをバレないようにしようとか。ホグワーツで教わることも、そういうのに使ったら闇の魔術になるんだよ………きっと」
静まり返った教室の視線に耐えられず、ルードは何か間違ったことを言ったのかと赤くなり声は小さくなってゆく。
沈黙を破ったのは、1人の同級生の拍手だった。
「ルードの言う通りよ。自分の欲望のために使ったら、良い魔法でも闇の魔術になる。そうでしょ先生」
確信をついたルード、分かりやすいないよにまとめたミハエルの声で目をつぶっていたシリウスはゆっくりと立ち上がり、生徒たち1人1人を見つめた。
「人は、誰でも心に光と闇を持っている。お小遣いが欲しい、それならいい成績を取ろうか、それともズルをしようか。人を喜ばせて自分も喜べる、光。人を陥れて、自分だけが徳をする闇だ」
静まり返った教室、うつむき考え込む生徒、歩き回るシリウスを目線で追う生徒、目線を上げ自分の行いを振り返る生徒、どの生徒たちにもシリウスの声は響いていた。
「かつて、こんな魔法使いがいた。恐ろしい、強力な存在を恐れ、自分だけが助かり、ご褒美にありつきたいがために親しい友を売った」
色々な方向に向いていた目線が、四方から貫ぬくようにシリウスに集まる。
「企みが上手くいかず、罰を受ける運命にあった魔法使いは、ある魔法を使った。ホグワーツで習った魔法、爆発呪文コンフリンゴ(Confringo)だ」
「重要なのは、望みや欲望に迷ったときに、人のためか、自分だけのためか、どの道を選ぶかだ。光か闇かは?人は、そこで決まるんだよ」
教団へ戻ったシリウスに生徒たちの視線は集まったまま、賑やかな笑い声や騒がしいブーイングはなかった。
「来週には闇の魔術と向き合う特別講義がある。光を選ぶのか、闇に向かうのか、考えてほしい、これからずっと」
シリウス・ブラック教授の授業風景
シリウスが先生になったら、どんな授業をするのでしょう?
シリウスの魔法の実力は、学生の頃の成績とヴォルデモート卿と最初に対立した初期の不死鳥の騎士団時代、そして命を落とした『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』の「神秘部の戦い」場面から推測するしかありません。
初期の不死鳥の騎士団で第一線で活躍していたこと、ブランクがあったとはいえ神秘部の戦いで死喰い人と対等に渡り合っていたことから、現役の闇祓いと同じくらいの実力はあったはずです。
ブランクさえなければ、凄腕の闇祓いキングズリーくらいにはなっていたかもしれません。
魔法の実力の他にも、シリウスが他の魔法使いに比べて長けているのは、「頭の回転の速さ」と「発想の豊かさ」と「勇気ある実行力」です。
シリウスの頭の回転の速さは、冷静で落ち着いた状況なら相手の数手先を読むほど状況判断が優れていることです。
『ハリーポッターと炎のゴブレット』のホグワーツの状況と『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』の状況の違いで、現場を見る前に対応を変えています。
発想の豊かさは、杖を取り上げられた状況でアズカバンで吸魂鬼に「動物もどきになる」ことでやり過ごした対応。
『ハリーポッターとアズカバンの囚人』で、ネズミに化けていたピーター・ペティグリューをあと1歩まで追い詰めた作戦で活かされています。
そして、シリウスの名言「友を裏切るくらいなら自分の命はいらない」が示しているように、勇気ある行動をためらわず選択できる実行力があります。
この3つは、結果がはっきりと分かれていて、シリウスが感情的になって選んだ判断は悲惨な結果を招くことにもつながります。
また、シリウスはアズカバンで20代から30代半ばまでの15年を過ごしていたため、本音と建て前のある「大人同士の対応」が苦手なのは仕方がないことです。
シリウスが組織の中で大人同士の駆け引きをこなす場合、デメリットにもなることですが先生としてはメリットでもあります。
感性豊かな思春期の子どもたちは、大人の本音と建前をしっかりと見抜いていて、その矛盾に嫌悪感を覚える子も少なくはありません。
どこまでも本音で過ごしているシリウスは、おじさんだけど子ども心のわかる物分かりのいい先生として慕われるのは間違いなさそうです。
二次創作について
本記事は、ハリー・ポッターシリーズを原作として「もしも」をテーマにした二次創作物です。
ハリー・ポッターの著者J・K・ローリングさん、並びに原作出版社は二次創作に対し寛容とのお考えを知り、本ブログの読者さまのご期待に沿えるため作成させていただきました。
記事本文へのWeb広告の表示、原作のアフィリエイトサイトのリンクを控えさせていただくことで商標利用をしていない意志を示させていただきます。
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