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戦国一難しい夫を取り扱った帰蝶〜信長と暮らす令和で何を読む?

帰蝶と読書


大河ドラマ麒麟が来る』は、主人公の明智光秀織田信長が協力して、足利義昭の将軍就任を助けるシーンが盛り上がりを見せています。

川口春奈さんが演じる信長の妻 帰蝶の活躍も楽しみですね。

そこで、今回の「あの人なら何を読む」コーナーでタイムスリップしていただくのは帰蝶を選んでみました。

帰蝶が令和にタイムスリップ


「是非もない。光秀の手の者ならば、戦に関わりのない女子を切ることはせん。その方らは、裏口より逃げよ!」

「私は殿、信長様と共に…」

「ならぬ!」

首筋に掛かっていた布団の裾は、冷えた汗で濡れていた。

枕にも、汗ではない悲しさで濡れていた。

「夢、それにしても嫌な夢を………」

見上げた天井は、白く塗られ、床から一段高い台のような場所で寝ている。

「奥様、失礼してもよろしいでしょうか?」

「待って、まだ。えっ?」

一枚板の襖の先で女中の声が聞こえる。

寝室はいつから夫の持ち込んだ南蛮風に設えられ、見慣れない着物を着ているのだろうか?そして、なぜ何の迷いもなく着替えることができたのだろうか?

「奥様、そろそろ」

「ええ、ところで夫はどちらへ?」

飾りのついた自分に比べると、暗い色で襟周りも切りそろえられた着物、足のラインが浮かぶほど細い袴を履いた女性が新しい女中というのは受け答えでわかる。

「社長は、次期東京都知事として後押しさている足利議員の後援会のため、急ぎ東京へ向かわれました」

知らない言葉を話す女中の見せる手鏡には、鮮やかな絵が描かれて、「織田テクノロジズ、IT産業拡大のため足利議員を支援」と書かれた夫 信長の姿があった。

自分と似た上着は着ておらず、黒地に所々細かな金銀の輝きを放ち、襟のない顎の下まで覆った亀の首のような服を着た30代の信長。

手をにぎり合う細面の男性の服装と見比べても、着崩していることがわかる。

服装だけで、そこに映る男性が自分の知っている信長だというのは、すぐにわかってしまう。

見知らぬ風景に初対面の女中、仕組みのわからない道具。

それでも、同じ世界に信長がいるだけで居心地がいい。

ここが、帰蝶の今の居場所なのだろう。


帰蝶の現代での立場


織田信長の奥さんの帰蝶は、正式な記録が少なく「謎の姫君」と呼ばれることもあります。

記録があいまいなので、大河ドラマでも作風によっていろいろな描かれ方をされています。


10〜20代は波乱の恋模様

帰蝶は1535年に岐阜県(美濃)の斎藤道三の元に生まれます。

この頃、岐阜県で商人から大名にまで上り詰めた斎藤道三戦国大名の先駆けともいわれています。

現代なら、国営企業から独立して民営化した中堅企業 斎藤道商事の社長令嬢といった立場でしょう。

帰蝶は10代前半で守護と呼ばれる国から任命されている知事 土岐頼純と結婚します。

現代では、10代前半は保護者の親によって見守られる年代ですが、当時の武士社会では男子は戦場に出て、女性は婚約をする年代でもありました。

帰蝶の夫 土岐頼純は、その後急死してしまいます。

戦死したとも、暗殺されたとも伝えられていて、大河ドラマ麒麟が来る』では義父 斎藤道三によって毒殺されたシーンが印象的でした。

その後、帰蝶は対立関係にあった愛知県(尾張)の新興企業 織田製作所の跡取り織田信長と1548年に結婚します。

信長は1534年生まれなので、帰蝶より1歳年上、といっても14歳の新郎 信長と13歳の新婦 帰蝶、現代なら中学生同士の結婚です。


30〜40代は影の織田信長

13歳で信長と結婚した帰蝶は、20代前半で死亡してしまった説もありますが、今までの大河ドラマに合わせて本能寺の変まで信長の側にいる方が自然に思えます。

信長の代になり、社名を織田テクノロジーに変えた織田家は愛知県の主要都市全てと岐阜県に勢力を広め、斎藤道商事を吸収合併し傘下に収めます。

織田テクノロジズの社風は、社長の信長が現場を駆け回る経営方針です。

「社長にノルマの相談なのですが、いつも忙しく聞き入れてもらえず………」

「そうですか、ではノルマは今の
留守にしがちな岐阜県を守っていたのは、地元に慣れた帰蝶だったのでしょう。

信長には、長男 信忠と次男信雄、徳川家に嫁いだ徳姫を産んだ吉乃の他、何人かの側室がいたことが記録に残っています。

帰蝶には、子どもがいないことが明らかなので、社長夫人、影の信長として織田テクノロジズを支えていたはずです。


50代は愛夫とともに…

帰蝶の細かな配慮、社員の競争で織田テクノロジズは日本最大の民間企業 織田グループへと成長します。

帰蝶、世界は海で繋がっている。グローバル化にワシも乗ろうと思う」

「そうですか、素敵な夢。私も世界の広さを見てみたいものです」

会長 信長は海外進出の夢を安土城帰蝶に語っていたのでしょう。

ですが夢半ば、帰蝶にとっても旧知の仲 明智光秀のクーデターで失脚してしまうことに………。

帰蝶もまた愛夫とともに、この世を去ったのでしょう。



帰蝶の仕事と性格


帰蝶がどんな人物だったのか、細かな記録が残っている戦国武将と違い、周りの様子から想像してみます。

【仕事】目立たない細かな配慮と先を読む力
【性格】穏やかな共感力と協調性
【趣味】信長と楽しめるアウトドアが趣味


【仕事】目立たない細かな配慮と先を読む力

仕事については、川口春奈さん演じる『麒麟が来る』の帰蝶をイメージしてみました。

直感を頼りに現場を駆け回り、大胆な判断を下す信長。

こういう人の場合、細かな配慮が抜けてしまいがち。

他の大名と戦に出るにしても、長期戦になったときの費用はどうするのか?

戦死者が多いときの家族への補償は?

そういった細かな仕事をこなせる、「先を読む力」が必要だったのではないでしょうか?


【性格】穏やかな共感力と協調性

信長が感情豊かでアグレッシブな性格なので、似たような性格ではぶつかってしまうはず。

そこで、内田有紀さんが『軍師官兵衛』で演じた帰蝶が思い浮かびます。

熱くなりがちな信長を見守り、穏やかに熱を冷ましていく。

部下が恐ろしくて直接言えないことも、帰蝶なら決して怒らずに聞いてくれる。

夫 信長と周りの人の信頼を集める穏やかな共感力と協調性を持ち合わせていたはずです。


【趣味】信長と楽しめるアウトドアが趣味

子どもがいなかった帰蝶は、信長と一緒に出かける機会も多かったはず。

当時、自然豊かだった岐阜県生まれの帰蝶も「鷹狩り」というキャンプを楽しんだのかもしれませんね。


帰蝶なら今何を読むか


歴史上でも、現代でも変わらない夫の元にタイムスリップした帰蝶

ITベンチャー企業織田テクノロジズ社長 織田信長と共に、現代を楽しみながら生きるために読む本は?

シリコンバレー式 最強の育て方 ― 人材マネジメントの新しい常識 1 on1ミーティング』世古詞一

1冊目は、1対1のミーティングで細やかに社員の良いところを伸ばす方法が書かれた人材マネジメントの本です。

信長の仕事の仕方は、おそらく戦国時代と変わらないでしょう。

ですが、令和の現代で人材は貴重なものです。

いち早く気がついた帰蝶は、社員との1対1のミーティングを取り入れて、社長 信長が疎かにしがちな人材育成を支えていくのでしょう。


『定年夫婦のトリセツ』黒川伊保子

2冊目は、「トリセツ」シリーズで有名な黒川伊保子さんの本です。

『夫のトリセツ』も面白い本なのですが、個性的な信長の妻をこなせる帰蝶の方が新しい本を書けるほど夫の取り扱いは得意なはず。

本能寺の変で、現代の定年を前にこの世を去った帰蝶と信長。

令和の現代で、2人は何を夢見るのでしょう。

織田グループを世界一のグローバル企業に育て上げた2人。

令和の現代では、定年後は穏やかに過ごしてほしいものですね。


『そうだ、キャンプいこう!』こいしゆうか

今回の帰蝶は、アウトドアも好きということにしています。

信長のアウトドアは、大勢でワイワイ騒ぐアメリカンスタイルです。

「あなた、たまには2人で静かに焚き火でも眺めない?」

社員や仕事仲間を集めて騒ぐ普段のキャンプから、夫婦で静かに時間を感じるキャンプに行ってほしいものですね。


帰蝶にまつわる現代の本


帰蝶(きちょう)』諸田玲子

『戦国姫 ―濃姫の物語』藤咲あゆな

ふたりごと - 戦国夫婦物語』藤見よいこ

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