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経済小説とは?お仕事小説も含まれる特徴と分類

経済小説とは?

読書の豆知識


今回の読書の豆知識で取り上げるジャンルは、経済小説です。
経済小説といわれると専門的で難しく聞こえますが、映像化されやすい小説のジャンルですので読書の習慣がなくても知っている作品があるはずですよ。
それでは、経済小説の特徴と分類、代表作をまとめさせていただきますね。


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経済小説の定義と特徴

経済小説とは?


ストーリー展開に違いはあっても、経済小説は定義と特徴がはっきりとしたジャンルの小説です。

経済小説とは?

ストーリーの中で経営者、中間管理職、会社員の登場人物目線で企業のありかた、経済の仕組み、労働問題などをテーマにした作品が経済小説と呼ばれています。
経済小説は「仕事とお金と暮らし」を取り上げたジャンル全般の小説で、さらに細かくビジネス小説・企業小説・金融小説・銀行小説と分類されることもあります。


経済小説の定義
経済小説の定義

経済小説は、経済の専門家 堺憲一さんの著者の冒頭をまとめると次のように定義されています。

経済小説(けいざいしょうせつ)は、企業、業界、人物(経営者、中間管理職、会社員)、経済現象、経済事件などを扱う小説の総称
参照:堺憲一『この経済小説がおもしろい!』

経済小説の4つの特徴
経済小説の4つの特徴

経済小説が持つ特徴は、作者目線の解説や読者の方の考察で概ね3つから4つあるとされています。

①リアリティ:舞台のリアルな再現
②エンターテイメント性:等身大の登場人物
③情報・知識:ビジネスに役立つ情報
④時代性:時代設定の再現

経済小説の特徴の1つ目は、①リアリティです。
舞台になる企業や取り上げる問題のリアルな再現がされていて、実際に同じ現場を知る読者からも違和感なく受け入れられる正確さです。
2つ目の特徴は、作品の②エンターテイメント性です。
現実を舞台にした経済小説では、現実に打ちひしがれたり、仕事に行き詰まった会社員が登場します。
対立するライバル社員、理不尽な経営者や組織の上層部、主人公を陥れようとする上司など立場に合った役割があり、それでいて実際に身の回りにいそうな等身大の登場人物の活躍が魅力です。
3つ目の特徴は、経済小説ならではの③情報・知識です。
作家さんが取材を重ね、専門家の見解が加わった経済小説は、小説でありながら、仕事に役立つノウハウや業界の仕組みに触れることができるビジネス書のような役割も持ち合わせています。
4つ目の特徴は、舞台になる時代設定を再現していることです。
高度経済成長、バブル、氷河期、リーマンショックと経済史と呼ばれる時代背景と結びつく作品は、登場人物たちのさらに外に広がる世界にまで目線が広まる現実を描いた小説ならではの特徴のひとつです。

参照:
黒木亮ドラマ化原作の魅力!必読の経済小説案内
経済小説のキホン - 経済小説イチケンブログ



経済小説を分類するのはテーマと時代の2つ


経済小説は、経済界を舞台にしたストーリーから1人の会社員の活躍を描く物語まであります。
他のジャンルの小説と同じように、登場人物が直面する「テーマ」、ストーリーの舞台設定の「時代」の2つでいくつかの分類があります。

テーマ別の経済小説の分類
経済小説のテーマ別の分類

経済小説でのテーマは、登場人物が直面する問題や社会全体が抱える悩みといえます。
テーマ別に、①働き方②組織のあり方③経済全体の3つに分けられます。
①働き方は、会社員目線で働き方や仕事のやりがいと向き合うストーリーで、かつてはサラリーマン小説・OL小説と呼ばれていました。
最近では、同じ会社員でも職業別に業界の細かな習慣などが描かれる「お仕事小説」と呼ばれています。
②組織のあり方は、大企業ならではの組織の問題や中小企業と大企業の対立を取り上げたストーリーの経済小説です。
経済小説ならではの正確な「情報・知識」で業界の仕組みを再現する企業小説、金融小説が人気を集めたこともあります。
ストーリーの展開重視の作品では、中小企業の工夫が大企業を動かす展開、組織の少数派が権力者側を懲らしめる痛快小説は、原作者にちなんで「池井戸ワールド」と親しまれています。
③経済全体がテーマの作品は、広い意味での経済小説、経済と社会問題が重なり合う作品は社会小説に分類されることがあります。

参照:ビジネスの知識は「経済小説」で学べ! | PRESIDENT WOMAN Online(プレジデント ウーマン オンライン) | “女性リーダーをつくる”


時代別の経済小説の分類
経済小説の時代別の分類

経済小説の舞台設定の「時代」は、世の中の景気や出来事で①高度経済成長期②バブル経済グローバル化④現代の4つに分けられています。
①高度経済成長期は、1955年から1970年代までの好景気の時代です。
高度経済成長期の経済小説は、会社組織の中で過ごす男性主人公が活躍する企業小説が中高年男性の読者の人気を集めていました。
バブル経済は、1980年代中頃から1990年代中頃にかけて株価が右肩上がりだった時代です。
好景気に沸く世の中と同じように、夢を抱いた会社員の出世物語や、組織に馴染めない若者がベンチャー起業を生み出し大成功するといった令和の現代からはファンタジーにも思える経済小説が注目されるようになります。
ただ、現代的な目線ではファンタジーですがバブル経済の当時は現実に起こっていた出来事でもあります。
バブル崩壊後は、バブル経済が崩壊した1990年後半〜2000年代にかけての時代です。
ちょうど、バブル崩壊前後は「働く女性」が注目され始めた時代でもあり女性主人公が活躍するOL小説が出版されるようになりました。
④現代は2000年以降、不景気が終わらず先の見えない世の中で、ワークライフバランス働き方改革がすすめられ仕事そのものが何なのかを見つめ直している時代です。
今まで描かれなかった業界で働く人が主人公のお仕事小説、中小企業と大企業、経営陣と現場が対立する展開の痛快小説が人気を集めるようになります。
読者目線では、等身大の主人公と気の置けない同僚、天才肌の変わり者や頼りになる先輩と悪役上司といった定番の経済小説から、「登場人物みんな個性的」な多様化が広まった時代にも思えてなりません。

参照:経済小説のキホン③ - 経済小説イチケンブログ



時代別の経済小説の代表作


経済小説の特徴と分類のお話をさせていただきましたので、時代別の経済小説の代表作を紹介させてくださいね。

経済小説で有名な作家:城山三郎池井戸潤真山仁楡周平山崎豊子

高度経済成長期の経済小説『総会屋錦城』

総会屋錦城(新潮文庫)

城山三郎
著者 城山三郎
出版社 株式会社新潮社
分類 経済小説
出版日 新潮文庫1963/11/5(単行本1959年)
読みやすさ☆★★少し難しい

経済小説の生みの親と呼ばれる城山三郎の『総会屋錦城』は、日本国内で初めて出版された経済小説の発祥となった作品です。
物語の舞台は戦後の雰囲気が残る1950年代、原材料の出どころが怪しいメイドインジャパンは粗悪品の代名詞といわれ、違法な理不尽がまかり通る時代。
総会屋という稼業を続けて60年の主人公 内藤錦城は、大手銀行の経営陣の腐敗を正すため臨時株主総会に臨んでいた……。
経済小説の4つの特徴の中でも、株主総会の①リアリティ、金融機関の組織と経営の③情報・知識、そして高度経済成長期に移り変わる④時代性が描かれた作品です。
後に経済小説文学賞城山三郎経済小説大賞」、ノンジャンルの「城山三郎賞」が創設されるほどの偉人の作品は経済小説のジャンルを紹介させていただく上では欠かせない小説です。


バブル崩壊後の経済小説『ハゲタカ』真山仁

新装版 ハゲタカ 上下合本版 (講談社文庫)

著者 真山仁
出版社 株式会社講談社
分類 経済小説
出版日 講談社文庫2013/9/13(単行本2004/12/4)
読みやすさ ☆☆★読みやすい
物語の舞台は、バブル崩壊後に企業の倒産とリストラで混乱する1990年代後半。
外資投資ファンドを経営する鷲津政彦は、大手都市銀行の三葉銀行の不良債権処理をきっかけに買収に乗り出す。
一方で、三葉銀行で働く芝野健夫は社内の混乱から銀行を離れ地元スーパーの企業再生の道を歩むことに。
2人の企業再生の取り組みは、後に国を動かすほどの出来事に……。
経済小説の4つの特徴では、登場人物の駆け引きが見どころの②エンターテイメント性、企業再生の③情報・知識、バブル崩壊の世の中の④時代性の3つを兼ね備えた作品です。


現代の経済小説下町ロケット池井戸潤

www.yu-hanami.com

著者 池井戸潤
出版社 株式会社文藝春秋、株式会社小学館
分類 経済小説、痛快小説
出版日 春秋文庫2025/9/3、小学館文庫2013/12/26(単行本2010/11/24)
読みやすさ ☆☆★読みやすい
阿部寛さんと吉川晃司さんのキャラクター像が印象的な、池井戸潤さんの『下町ロケット』。
失われた10年と呼ばれる2010年に出版された、時代を映し出す経済小説です。
原作小説の佃航平は、挫折を経験した中小企業の律儀で人情的な社長。
大企業幹部の財前道生は、経営陣と現場、取引先のプレッシャーと向き合うひたむきな管理職として描かれています。
経済小説の4つの特徴では、痛快小説ならではのストーリー展開が楽しめる②エンターテイメント性が中心ですが、企業同士の取引を細かく描いた③情報・知識はビジネスパーソンに欠かせない内容です。


経済小説のまとめ


ストーリーの中で経営者、中間管理職、サラリーマンの登場人物目線で企業のありかた、経済の仕組み、労働問題などをテーマにした作品が経済小説と呼ばれています
テーマ別には、①働き方②組織のあり方③経済全体で細かく分類され、世の中の景気や出来事で①高度経済成長期②バブル経済グローバル化④現代の4つの時代の分け方もあります。
テレビの解説者として経済界に精通した池上彰さんも、「業界の仕組みを知るためには経済小説を読むのがいい」と著書の中で語られています。
私たちの実生活に近く、作家さんの集められた情報を元に書かれた経済小説は、働き方のシミュレーションにぴったりの本なのではないでしょうか?


参考にした本


『書きたい人のためのミステリー入門』新井久幸
www.yu-hanami.com

『読書の価値』森博嗣
www.yu-hanami.com

『読書する人だけがたどり着ける場所』齋藤孝
www.yu-hanami.com

『超・戦略的!作家デビューマニュアル』五十嵐貴久
www.yu-hanami.com

『小説の書き方』森沢明夫
www.yu-hanami.com


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