本当に本が読みたくなる読書のブログ

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【ネタバレ】鬼滅の刃~無限列車編で煉獄杏寿郎が向き合った生老病死

鬼滅の刃で描かれた仏教的な価値観

読書コラム

2021年9月25日に放送された映画『鬼滅の刃~無限列車編』には、仏教的な価値観が描かれていました。

読書ブログらしく、今までに読んだお坊さん作家さんの本と照らし合わせながら、映画版の中心人物 煉獄さんの生き方を読み解いてみますね。

「人」は現実から逃げることはできない


鬼滅の刃に登場する鬼の中には、鬼舞辻無惨(きぶつじ むざん)を筆頭に能力の高い実力者に「上弦・下弦の鬼」が存在します。

映画『鬼滅の刃~無限列車編』に登場した「下弦の壱」魘夢(えんむ)は、人を眠らせ夢を自在に操る能力「血鬼術(けっきじゅつ)」の持ち主です。

魘夢の血鬼術は、心の弱い「人」を操ることにはうってつけの能力でした。

病気に苦しむ人、大切な人をなくした人は自身の良心を売ってまで魘夢に幸せな夢を見せてほしいと協力してしまう。

現実を見つめることは、そこで生きることは辛く、目を背けたくなるもの。

身体という、限りのある命でしか生きられない私たちは辛い現実の中でしか生きられません。

鬼滅の刃の物語も、私たちが暮らしている社会も、辛いことから逃れられない世界なんです。





四苦八苦を受け止める

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私たち「人」にとっての辛いことを、仏教では「苦(く)」といいます。

苦は人それぞれですが、全ての苦は4つの基本的な苦しみ生老病死(しょうろうびょうし)と、その他の4つの苦に当てはまります。

人はこの世に生まれたと同時に、老いる苦しみ、病にかかる苦しみ、そして死を迎えるという苦しみを受けます(生老病死苦)。
鳥沢廣栄『お坊さんが教える「イライラ」がスーッと消える方法』p17
イライラや悩みの解決に仏教の考え方を応用できる1冊 第3回 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ

四苦八苦とは?

また、愛する人と別れなければならない苦しみ(愛別離苦)、いやな相手と会わねばならない苦しみ(怨憎会苦)、欲しいものが必ず手に入らない苦しみ(求不得苦)、どうしょうもなく燃え上がる煩悩の苦しみ(五蘊盛苦)、という苦しみを経験します(これを四苦八苦といいます)。
鳥沢廣栄『お坊さんが教える「イライラ」がスーッと消える方法』p17
イライラや悩みの解決に仏教の考え方を応用できる1冊 第3回 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ

「他人が苦しむ姿を見るのが大好きなので」と語る魘夢は、この四苦八苦を巧みに見せることで「人」を意のままに夢の世界にいざないます。

過去に大切な家族を失った竈門炭治郎(かまど たんじろう)には、愛別離苦から逃れられる家族の夢。

女の子が大好きな我妻善逸(あがつまぜんいつ)は、思いを寄せる竈門禰豆子(かまど ねずこ)とデートをする夢で求不得苦が満たされます。

直感と本能のままに暮らす嘴平伊之助(はしびら いのすけ)は、探究心が満たされ五蘊盛苦から逃れるように洞窟を駆け回る夢を見ます。

人の心の傷、秘めた思いを勝手に操る虫酸が走るような凶悪な魘夢。

ただ、通称「煉獄さん」こと、鬼殺隊幹部の炎柱 煉獄杏寿郎(れんごく きょうじゅろう)が見た夢は…昇進の報告に訪れた実家で父親に冷たくされ、弱気な弟に悩みを打ち明けられる現実そのままの夢でした。


煉獄杏寿郎が受け止めた生老病死

煉獄さんは、なぜ幸せな夢ではなく現実を見たのでしょうか?

昇進の報告を聞いた父親が、「さすが俺の息子だ」と酒を飲み交わしたり、弱気だった弟が逞しく成長した姿を夢で見てもいいはずです。

それは、煉獄さんが辛い現実の世界から逃げず、いつも向き合っていたからでしょう。

これらの苦しみを乗り越えていくためにどうすればいいでしょうか?
それには、「八正道(はっしょうどう)」という教えがあります。
かいつまんでいうと、お釈迦様の「正しくものを見て、その苦しみを乗り越えて行こう」という教えですね。
廣中邦充『どんな命も花と輝け』p30
子どもたちと向き合ったお坊さんに学ぶ生き方の8つのお手本 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ

煉獄さんが四苦八苦の苦しみを受け入れていることは、彼の台詞で語られています。

魘夢を倒した後、「上弦の参」猗窩座(あかざ)は、鬼になって好きなだけ強くなればいいと煉獄さんを勧誘します。

その時の台詞が…

老いることも 死ぬことも 人間という儚い生き物の美しさだ 老いるからこそ 死ぬからこそ 堪らなく愛おしく 尊いのだ
引用:煉獄杏寿郎『鬼滅の刃』第8巻




夢ではなく今を見るということ


「人」の世界は苦しみだけではなく寿命があり、天国など仏教の他の世界に比べて極端に時間に限りがある世界です。

仏教は五戒で生き物を殺すことを禁止しており、時間を無駄にすることも戒めています。

「ときを大切に」とは、「1分1秒という瞬(とき)というものを大事に生きていこう。瞬を殺してはいけない」ということですね。
それが仏教の1つの原点なのです。
廣中邦充『どんな命も花と輝け』p93
子どもたちと向き合ったお坊さんに学ぶ生き方の8つのお手本 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ

現実をありのままに受け止め、限られた時間で「できる限りのこと」をすることが、仏教的に正しい行動のし方。

煉獄さんの台詞にも、彼が「八正道(はっしょうどう)」を実践してきた証が、短いひと言で語られています。

俺は俺の責務を全うする!
ここにいる者は誰も死なせない!
引用:煉獄杏寿郎『鬼滅の刃』第8巻

少年漫画が原作の映画『鬼滅の刃~無限列車編』ですが、お坊さん作家さんの本と読み合わせると内容はとても深いことに驚きます。

映画をご覧になったお坊さんが、法事先のお子さんへ向けて「お釈迦さまが見つけた生老病死の苦しみを乗り越えた人が最近いまして」と煉獄さんを例えにすると、喜んで聞いてくれそうな気がします。


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