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シリウスがポッター一家の秘密の守人で仕掛けた巧妙な二重トリック【ネタバレ】

シリウスが仕掛けた秘密の守人の二重トリック


J.K.ローリングさんの「ハリーポッターシリーズ」の中でも、人気の高い登場人物シリウス・ブラック。
映画でシリウス役を演じられた、ゲイリー・オールドマンさんの名演技も加わり根強い人気が続いています。
シリウスが12年間をアズカバンで過ごすきっかけになったのは、秘密の守人に指名した友人ピーター・ペティグリューの裏切りによるものでした。
今回は、ジェームズとリリー夫妻、シリウスが忠誠の術という魔法の特徴から、物語で語られることはなかった二重トリックを仕掛けていたのでは?というお話をまとめてみましたよ。

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忠誠の術と秘密の守人とは?

忠誠の術は、とある対立する勢力や人物から住宅の場所、対象人物の所在地、機密情報を守るために使われる魔法です。

忠誠の術
忠誠の術

(1)生きた人間に機密情報を隠す魔法
(2)隠された情報を秘密、人間を秘密の守人という
(3)住宅の所在地が秘密になると範囲内では姿くらましができない

忠誠の術(Fidelius Charm)は、生きた人間に住宅の場所、対象人物の所在地、機密情報などの「秘密」を封じ「秘密の守人」とする魔法です。
秘密になった情報は、秘密を持つ対象人物か、秘密の守人が漏らさない限り、外部に漏れることはないとされています。
つまり、秘密の守人から秘密を教えられていない第三者は、「秘密」の間近にいてもその存在に気付くことはありません。
また、住宅の所在地を「秘密」にする場合、住んでいる人自身が秘密の守人になることもでき、内部の人間は秘密の範囲内では姿くらましをすることはできないことが明らかになっています。


秘密の守人のルール
秘密の守人のルール

①第三者が秘密を知るには、秘密の守人から直接教えてもらう必要がある
②秘密の守人以外は第三者に秘密を明かせない
③秘密の守人が死亡すると事前に秘密を知っていた全員が自動的に秘密の守人になる

三者が秘密を知るためには、秘密の守人から口頭や文書で教えてもらう必要があります。
秘密の守人以外は、伝えられた秘密を知っていても、さらに他の人間に秘密を明かすことはできません。
また、秘密の守人が死亡した場合でも忠誠の術は解けないとされています。
その後は、事前に秘密を明かされた全員が自動的に秘密の守人になる仕組みがあります。




シリウスが仕掛けた秘密の守人の二重トリック

シリウスの二重トリック


ダンブルドア率いる不死鳥の騎士団と、ヴォルデモート卿の死喰い人が対立していた1970〜80年代、情勢は20:1で死喰い人が優勢とされていました。
その情勢を覆す「予言」が元で、ヴォルデモート卿が失脚すると同時に、悲劇も起こります。
物語の主人公ハリー・ポッターの身に起きた、ポッター一家襲撃事件です。

ポッター一家襲撃事件の1週間前

ヴォルデモート卿が1歳になったばかりのハリー・ポッターの命を狙う情報は、死喰い人側から寝返ったセブルス・スネイプによって不死鳥の騎士団が知ることになります。
当事の不死鳥の騎士指導者アルバス・ダンブルドアは、ポッター一家を死喰い人から隠すため、「忠誠の術」を使うことを提案し、ジェームズとリリー夫妻、そして2人に最も信頼されているシリウス・ブラックが秘密の守人に選ばれます。
死喰い人の追跡から逃れるためには、シリウスの優秀な魔法の技術と行動力がなくてはならず、何より友情に熱く義理固い人柄は秘密の守人に最適な人物でした。


シリウスが秘密の守人を交代した理由

ここで、後にダンブルドアや不死鳥の騎士団ですら知らなかった作戦を、ジェームズとリリー夫妻、シリウスは選択します。
それは、秘密の守人をピーター・ペティグリューに交代するというものでした。
表向きには、味方はもちろん死喰い人側にも「秘密の守人はシリウス」という予想はでき、魔法の技術はイマイチで小心者のピーターが秘密の守人に選ばれるはずはないという印象を逆手に取ったとされています。


秘密がバレず主導権を持てる二重トリック

実は、秘密の守人をシリウスからピーターに交代した理由は他にもあります。
秘密の守人には、「②秘密の守人以外は第三者に秘密を明かせない」「③秘密の守人が死亡すると事前に秘密を知っていた全員が自動的に秘密の守人になる」2つのルールがあります。
秘密の守人として追跡されるシリウスが捉えられたとしても、②のルールのため秘密を明かすことはできません。
死喰い人の追跡は、はじめから無意味だったことになります。
また、万が一ピーターが秘密の守人として追跡され、実力不足のために死亡したとしても、②のルールのため役割がシリウスに戻るだけです。
囮として逃走するシリウスが、常に主導権を握れる二重トリックの作戦です。




イタズラの天才だったシリウスならではの発想


秘密の守人のルール、さらに死喰い人側の行動を予想した二重トリックは、イタズラの天才だったシリウスならではの発想です。
シリウスが逃走に優れていることは、『アズカバンの囚人』での脱走と潜伏、『炎のゴブレット』でのホグズミード潜入で証明されています。
ピーターの裏切りさえなければ、死喰い人側はポッター一家襲撃事件を起こすことはできなかったでしょう。


ピーターの裏切りは計算外


シリウスの立てた二重トリックの作戦は、わずか1週間で破綻することになります。
それは、秘密の守人ピーターがヴォルデモート卿に情報を明かす裏切りによるものでした。

リーマス・ルーピンを警戒

不死鳥の騎士団の中にスパイがいることは、一部の騎士団員は気がついていました。
特にポッター一家に関する情報が漏れていたため、シリウスリーマス、ピーターの誰かをの可能性があることもお互いは気がついていたはずです。
シリウス自身は、狼人間のリーマス・ルーピンをスパイと疑い警戒していました。
反対に、ルーピンはシリウスがスパイであると疑っていました。
シリウスの家系は、純血主義の過激派ブラック家で兄弟と親戚から死喰い人に参加する者もいたからです。
ルーピンの家系も純血ですが、彼は狼人間でもあり、当事の狼人間は反社会団体として死喰い人の活動に協力していたからです。


ピーター・ペティグリューの計算外の行動

一方、本当のスパイだったピーターは、なぜか疑われていません。
・魔法の技術はイマイチ
・小心者
・自己主張が少ない
ピーターのこうした様子は、死喰い人からも相手にされないだろうと判断されていたはずです。
一方で、小心者という性格はヴォルデモート卿に恐怖心から従ってしまう、自己主張が少ないことは周りに劣等感を抱き、死喰い人で大きな役割をこなし認めてもらおうという悪い承認欲求を起こすことになります。
こうしたピーターの細かな変化を、シリウスもジェームズも見落としていたのでしょう。
もし、作戦にルーピンが加わっていたら、人の観察を細かく行う彼なら、秘密の守人に選ばれたことを心の中であざ笑うピーターの変化を見逃さなかったかもしれません。




もし、ピーターが裏切っていなかったら……


もし、ピーターが裏切らずに秘密の守人の役割をこなしていたら。
大多数の死喰い人がシリウスを追跡したとしても、追い詰められる可能性はわずかでしょう。
ピーターが死喰い人を裏切り逃走したと追跡され捕らえられ、脅されても裏切らなかったとしたら……。
予言を恐れるヴォルデモート卿の求心力は下がり、情勢は覆ったかもしれませんね。


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考察ページは、【ネタバレ】にご注意くださいね。

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