本と読書の用語辞典[改定3版]
読書にまつわる言葉の意味と、独自のひと言を込めた「本と読書の用語辞典」。
定期的に加筆を続けて、今回もさらに更新してしまい長くなっています。
今回は、読書術のジャンルと参考図書を追加、専門ページへのリンクを充実させています。
本と読書の言葉と歴史
本と読書そのものにまつわる言葉の由来。
戦後半世紀では、あまり呼び方は変わっていない。
本(ほん)、書籍(しょせき)
ユネスコでは、「本文が少なくとも49ページ以上から成る、印刷された非定期刊行物」と定めている。
文章の書かれた紙を片方で閉じたものが「本」と呼ばれる。
有名人の中では、本を出版することが1つのステータスと言われた時代もあった。
読書(どくしょ)
本を読むこと。
歴史的には、勉強のための技術。
小説の普及で、楽しむ趣味でもあるが、最近では情報を収集・分析・整理する技術でもあるといわれている。
読書の仕方と読書論
本をいかに早く読めるか、内容をどれだけ覚えていられるか。
楽しみとしてだけではない読書という技術。
味読(みどく)
速読(そくどく)
英語:speed reading、rapid reading
本や文章を速く読むこと。
栗田式SRS速読法など、いくつかの方法がある。
日本人の文字を読む速さは400〜600文字/分(花水由宇は616文字で「ゆっくり目」)。
新書を120000文字として、1分で400文字読める人は300分で1冊読むことができる計算になる。
速読は「頭に良い」「知識のインプット量が増える」と言われているが、本は楽しみたいものだと思う。
瞬読(しゅんどく)
速読よりもさらに速く、異次元の速度で本を読む技術。
速読より速いながらも、速読よりま簡単に身につけられるといわらている。
ここまで、速くなくてもいいかな。
多読(たどく)
本をたくさん読むこと。
多読が良いと言われる場合と、良くないと言われる場合がある。
本をたくさん読むのは良いことだと思う。
多読と熟読のメリットと本の種類別の読書のし方 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
音読(おんどく)
本や文章を声に出して読むこと。
学校では教科書を声に出して読む音読の習慣がある。
暗記に良いと言われているが、その人の覚え方によって異なる。
朗読(ろうどく)
本を声に出して、誰かに読み聞かせること。
音読は「ただ声に出して読む」だけで良いが、朗読は「誰かに聞かせる」ために読む。
そのため、気持ちや状況が分かるように上手に読むのが良いらしい。
ちなみにNHKのラジオの朗読番組は良いと思う。
読書論(どくしょろん)
いい意味≒読書家、作家、論評家、一般の方が読書に対して持っている価値観
悪い意味≒「読書はこうあるべき」という価値観の押し付け
良くも悪くも正解はない。
現代の本の種類
ここ数年〜10年の本の種類。
少しずつ、言葉が変わったりしている。
ノンフィクション(カテゴリ:エッセイとノンフィクション)
現実に起こった出来事、実在の人物のエピソード。
最近では、有名事件のドキュメンタリーが多い。
実はエッセイも、広いジャンル分けではノンフィクションに含まれる。
歴史・地理、政治・社会(カテゴリ:ビジネス書、政治と経済の本/実用書)
日本国内・国外の地域にまつわるお話、政治や社会問題をテーマにした本。
政治家の方の本はここに分けられる。
小説に関する用語
小説のジャンル〜作品の内容で細かく分かれる小説の分類 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
純文学と大衆文学が互いに競い合った大正時代。
令和の時代の小説の分類を文豪の方が見たら驚きますね。
純文学
純文学の日本での定義は、「学問のための文章でなく美的形成に重点を置いた文学作品」(北村透谷)。
作品の芸術性>物語のストーリー
現代では、純文学と大衆文学の区別は曖昧。
大衆文学
純文学と比較して、作品の「娯楽性」を重視した作品が大衆文学。
この「娯楽性」は、取り上げるテーマ、物語のストーリー、登場人物のキャラクターであったりする。
かつては、「物語のストーリーが読者に楽しみを持ってもらう内容」であることが大衆文学の醍醐味だった。
現代では、純文学と大衆文学の区別は曖昧。
推理小説(ミステリー小説)
推理小説は、なんらかの事件・犯罪の合理的な解決へ向かう物語を描いたもの。
わかりやすい推理小説の形として、主人公役が警察官や私立探偵で、担当する犯罪を解決していくという物語の展開。
最近では、謎を解く主人公役が一般人のことも多い。
青春小説(アオハル小説)
主人公や登場人物が若く、若者ならではの人間関係や悩みを取り上げた作品。
テーマが若者ならではの悩みであることから、一部恋愛小説と重なる部分もある。
恋愛小説
名前の通り、登場人物同士の恋愛を描いた作品。
恋愛小説は好き嫌いの分かれるジャンル。
好きな方は、その作家さんの作品をとことん読みますが、読書好きの方でも1冊も読んだことがない方もいるほど。
SF小説(サイエンス・フィクション小説)
「科学的論理を基盤にしている。また、たとえ異星や異世界や超未来が舞台であっても、どこかで「現実」と繋がっている」物語、大森望より。
現実との繋がりと科学的な論理(裏づけ)が必要。
ファンタジー小説とSFの違いは、ファンタジーが架空の超科学(魔法、超能力)のある世界、SFが架空の科学(未来や違う宇宙の技術)のある世界。
ファンタジー小説(幻想小説)
「仮想の設定のもとに、物語の世界を構築する作品」。
作品に空想的な要素(魔法や超能力)、言い伝えなどの伝承や神話によって作られた世界観を持っているもの。
ファンタジー小説とSFの違いは、ファンタジーが架空の超科学(魔法、超能力)のある世界、SFが架空の科学(未来や違う宇宙の技術)のある世界。
ホラー小説(怪奇小説、怪談小説)
怪談小説とも呼ばれていて、読者に恐怖感を抱かせる作品。
取り上げられるテーマには、古くから幽霊や怪物が登場する作品がある。
最近では過激な宗教や人の内面の恐ろしさを描いた作品があり、こちらのほうがリアルで恐い。
ライトノベル
定義はないといわれていて、『このライトノベルがすごい!』では、募集の作品を「読者がライトノベルと思う対象期間内の作品」であれば可能。
目安は、登場人物のキャラクターや物語の舞台のイラストがある、読者層が10〜20代の若い方を対象にしている、登場人物同士の会話が多いことがある。
歴史小説、時代小説
歴史小説は歴史上に実在した人物を登場人物として、ほぼ史実に即したストーリー、その時代の中での空想上の物語が書かれたもの。
時代小説は、歴史上に実在する時代を設定して、史実とは違った設定をする、架空の人物を登場させる作品。
「史実通りか」「史実とは異なる展開か」、「架空の人物を登場させるか」の2つで違い。
児童小説
児童小説は、児童文学は12歳程度までの児童を対象に書かれた作品。
児童文学の特徴は、「子どもが理解できるように書かれている」こと。
子どもよりも大人が読んでも面白い作品が多い。
官能小説
官能小説は異性間、同性間の性的な描写をテーマにした作品。
列記とした小説のジャンルだが、過激な恋愛小説を「官能小説のようだ」と揶揄する場面で使われることがある。
出版と製本に関する用語
最後に、製本や出版にまつわる用語のお話。
書籍(しょせき)
英語:book
本、書物(しょもつ)とも言う。
辞書的には複数枚の紙が一方の端を綴じられた状態になっているものが書籍と言われていて、昔の巻物は本ではないと言われている。
単行本
全集の中の1冊としてではなく、単独で刊行(かんこう)される本のこと。
上巻、下巻など分割形式の本も単行本に分類される。
新書(しんしょ)
元々は新書サイズで刊行されていた本のこと。
最近では最近刊行された「新しい本」が新書の意味で使われている。
はじめて発行された新書は1938年の岩波新書。
実は漫画の単行本も同じサイズの本。
文庫(ぶんこ)
多く読まれることを見込んで、小さく廉価にした書籍。
はじめて発行された文庫は1927年の岩波文庫。
多く読まれることを見込んではいるが、売れ筋の良いうちは文庫化されない。
文庫化は早い方が嬉しい。
ハードカバー
英語:hardcover, hardback
上製本・本製本とも呼ばれるソフトカバーではない本。
厚紙や革の表紙を持つ固い本。
本来は印刷技術が発展しておらず、本が貴重だった時代に文章を保管しておく目的だったと言われている。
ハードカバーはお値段も高く欲しくても何冊も買えない。
判型(はんがた、はんけい)
本の寸法で縦と横の長さの規格。
身近な本ではB6判(単行本)、A5判(文芸誌、教科書)、四六判(文芸誌)、菊判(学術誌)、B40判(新書)、A6判(文庫版)。
本好きとしては判型は3つくらいに統一してほいしところ。
花水規格の判型、単行本サイズ、新書サイズ(高さは単行本と同じ)、文庫本サイズ、これくらいでいい。
図書館論争(としょかんろんそう)、無料貸本屋論争(むりょうかしほんやろんそう)
図書館と出版社で起こっている摩擦。
出版社側は「図書館で文庫本の貸出数が増えて、文庫本の売り上げが減っている」と主張。
図書館側は「図書全体に占める図書館の購入分は僅かなので売り上げには影響しない」と反論。
レンタル保証料金で本を販売すれば、解決しそう。